菊池俊彦『オホーツクの古代史』
菊池俊彦『オホーツクの古代史』(平凡社新書、2009年)
唐の長安に流鬼国なるところから朝貢使節が来たという記述が中国の史書にあり、この流鬼国のさらに北には夜叉国なるものがあったという。流鬼国とは何か、カムチャツカ半島にあったのか、それともサハリンにあったのか? 本書は、文献史学や考古学の成果を踏まえて従来の学説に一つ一つ検討を加える作業を通して、環オホーツク海古代文明の輪郭を浮き彫りにしていく。オホーツクの古代文化にはいまだに謎が多いようだが、この海域にも様々な文化の交流があったこと、北東アジアの民族興亡からの影響もあったことが少なくともうかがえる。北方文化については日本史のスタンダードから外れるからだろうが、興味は感じていても手頃な類書がなくて、ちょっと勉強してみようという気持ちはおこらないままだった。地味ではあるがこういう本はありがたい。
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