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2010年11月10日 (水)

永積洋子『平戸オランダ商館日記──近世外交の確立』

永積洋子『平戸オランダ商館日記──近世外交の確立』(講談社学術文庫、2000年)

 1609年に開かれ1641年に長崎出島へ移転するまで平戸にあったオランダ商館。本書は、ここで商館長によってつけられていた日誌を読み解きながら、当時における貿易活動の具体的な様子やとりわけオランダ人と日本人とのやりとりが生々しく描かれていく。商館長のパーソナリティーによって日蘭関係が左右されてしまうこともあるし、日本側の機嫌を損ねないよう幕閣重臣に付け届けをしたり、日本の慣習に合わせようと苦心しているのも興味深い。

 カトリックの宣教師を帯同したポルトガル人とは異なり、オランダ人は商業目的と割り切っていた。しかし、キリシタン取締を厳しくしつつあった幕府の眼には同類に映っており、島原の乱でオランダ人の支援を依頼したのも、単に西洋式大砲を使いたかっただけでなく、日本人キリシタンへの弾圧にオランダ人が協力するかどうか踏み絵を踏ませる意図もあったようだ。ポルトガル人追放の決定と同時にオランダ人も平戸を退去して長崎出島へ移るように求められた。幕府側の要求にオランダ人は反対せず素直に従ったため、日本人はオランダ人に好意を持ち、信頼感を基に欧米人の中でも特別扱いするようになっていく。こうした信頼関係の中から、例えばタイオワン事件(交易上のトラブルから日本人の浜田弥兵衛がタイオワン[現在の台南安平]のゼーランディア城でオランダ人長官ノイエを捕らえ、オランダ人捕虜を連れて日本へ帰国した事件)のオランダ人捕虜釈放も進んだ。以後、「鎖国」下にある日本は出島のオランダ人を通して西洋世界と関わりを持つという外交関係が成立することになる。

 なお、著者は三木清の娘さんらしい。

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