【映画】「1978年、冬。」
「1978年、冬。」
1978年、文化大革命の混乱もそろそろ終息しようかという時期。舞台は中国北部の工業都市。ほこりっぽい工場の煙突からは濛々と煙が立ち上り、風景の寒々とした印象を一層強めてくる。父が反革命分子として下放されて知人に預けられる形で北京から来た少女と、彼女の垢抜けた美しさに憧れを抱く兄弟。
兄は工場勤務をいつもさぼって不良と罵られている。ラジオをいじっているのは狭い街から抜け出して外の世界を見たいという鬱屈した気分の表れであり、北京から来た彼女への憧れにもそうした気持ちが関わっているのだろう。工場街の光景は無機的で冷たく、しかも季節は冬である。しかし、少年・少女それぞれが抱える、息苦しさの中でのもがきと淡い恋心との絡まった心象風景として重ね合わせてみると、そこからはパセティックな感傷が静かに浮かび上がってきて、この冷たい風景も実に美しく感じられてくる。ヒロインの沈佳妮が醸し出す清潔感あるかわいらしさも目を引いた。
【データ】
原題:西幹道
監督:李継賢
2007年/中国・日本/101分
(DVDにて)
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