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2010年10月31日 (日)

渡辺靖『アメリカン・デモクラシーの逆説』、堀内一史『アメリカと宗教──保守化と政治化のゆくえ』

 アメリカは建国の理念に普遍主義的志向がうたわれていたこと、さらには現代世界における存在感の大きさから、アメリカの政治や社会がはらむ理念と現実との落差はダブルスタンダードだという批判を世界中から招きやすい。しかし、むしろその落差にこそアメリカ社会が抱える生身の葛藤がうかがえるのだろう。

 渡辺靖『アメリカン・デモクラシーの逆説』(岩波新書、2010年)はそうしたアメリカ社会の矛盾や逆説を幅広いテーマから内在的に描き出す。保守派が示す、連邦政府に対する懐疑とアメリカ第一主義の両立、新自由主義と「家族の価値」重視の結び付き。孤独な個人主義の不安。アメリカは「近代」の先進的モデルである一方で、保守派教会も増加しつつある二面性(「再魔術化」?)。人種問題、貧困、宗教的原理主義の台頭などによって多様性が損なわれかねない一方で、同時に多文化主義そのものが「普遍主義」「原理主義」化したらこれもまた抑圧の言説ともなり得る逆説。そして、アメリカの行き過ぎを批判する「反米」的な議論枠組みは他ならぬアメリカから現れている。プラスか、マイナスか、どちらかの固定的イメージに収斂させてしまうのではなく、矛盾と葛藤の真っ只中にある姿を出来るだけありのままに描こうとする視点を著者が持っているのは、それだけアメリカ社会に備わったバランス感覚に信頼を置いているからであろう。

 アメリカで大型選挙が行われるたびに宗教票の行方が報道でも話題となる。アメリカ事情に不案内な私などはそのたびに近代的リベラリズム対保守的宗教原理主義という二元対立的な構図を暗黙のうちに思い浮かべやすいのだが、堀内一史『アメリカと宗教──保守化と政治化のゆくえ』(中公新書、2010年)を読むと、そんなに単純ではないことが分かる。本書は19世紀の進化論裁判から現代に至るまでのアメリカにおける政治とキリスト教との関わりについて政治学的・社会学的議論を参照しながら整理してくれる。教義上の問題だけでなく、人口動態、メディア、社会的イシューの変化に教会がどのように対応したのか、様々なダイナミズムが働いていたことがうかがえる。

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