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2010年10月10日 (日)

坪井善明『ヴェトナム現代政治』、古田元夫『ドイモイの誕生──ベトナムにおける改革路線の形成過程』、中野亜里『現代ベトナムの政治と外交──国際社会参入への道』

坪井善明『ヴェトナム現代政治』(東京大学出版会、2002年)
・ベトナムでは共産党一党支配を前提として言論統制下にあり、「批判の学問としての政治学」は存在しない。統治エリートに身を置いていない限り、現地のベトナム人の大半でも政治構造の全体像を把握するのは困難であるが、そうした限界を自覚しつつ、公刊資料や自身の見聞等を通して現代ベトナム政治・社会の概略を間接的に描き出そうという試み。
・ベトナム政治社会の三つの顔→①伝統:ベトナムの伝統としての長老支配、強い個人と強い共同体。中国文明の影響→科挙官僚。フランスからは近代的普遍価値を受容→植民地支配者とは別の顔。②発展途上国。③社会主義。
・神格化されたホー・チ・ミンについてBrocheuxとDuikerの評伝を紹介。ナショナリストか共産主義者か?という論争点。
・共産党:政治局員の序列は①書記長、②国家主席、③首相、④国会議長→北・中・南部という出身地域、軍・政治・経済という出身母体のバランスが考慮されている。
・軍:中国と同様に軍事目的だけでなく、生産活動・政治教育活動→近代的装置(学校)としても機能。ドイモイ→市場経済の進展・門戸開放→「和平演変」のおそれから保守派の勢い増大→軍の政治的役割も強化された。
・祖国戦線:共産党その他の団体による大衆的政治連合組織。大衆動員を行なうと同時に、下からの要求や不満を党・国家に吸い上げるチャネル。中国の人民政治協商会議よりも政治的役割は大きい。
・日本など「自由主義政治体制」とは異なり、ベトナムの「社会主義政治体制」の権力観は共産党一党支配が基本原則→武力革命(1945年の八月革命から第一次インドシナ戦争、ベトナム戦争)という事実に依拠。
・国会→「独立候補」をいかに保障するか。立法機能をいかに向上させるか。
・汚職や政治腐敗の問題、地方行政組織の機能不全。
・司法→党の恣意的裁量ではなく、いかに「法の支配」を確立させるか。
・都市と農村、南部と北部の貧富の格差が拡大。

古田元夫『ドイモイの誕生──ベトナムにおける改革路線の形成過程』(青木書店、2009年)
・「貧しさを分かち合う社会主義」、ソ連型社会主義の「普遍モデル」はベトナム戦争における戦時体制として機能。しかし、「北」で定着したこのモデルを統一後に「南」へも強制したところ反発が大きかった。
・生産請負制の導入など地方の実験からはじまった「下からのイニシアティブ」を皮切りに共産党最高指導部が方針転換(もともと保守派であったチュオン・チンが経済的に停滞した現状に危機感を抱いて改革派へと転身)→ドイモイが政策路線として定着したプロセスを本書は分析。
・ペレストロイカ等の外からの影響というよりも、ベトナム自身の内在的な事情からドイモイは始まったと捉える→「普遍モデル」からの脱却、社会主義の「民族化」。

中野亜里『現代ベトナムの政治と外交──国際社会参入への道』(暁印書館、2006年)
・ベトナム戦争の終結後、現在に至るまでのベトナムの外交政策の変遷を跡付ける。
・ベトナム戦争後、世界人民はベトナム革命を支持してくれているという自信に基づく対外政策、しかし中越紛争、カンボジア侵攻などで国際的孤立を招いていしまったという誤算。ハノイ指導部はアメリカに対しては道義的責任を基準として対応→関係改善のチャンスが遅れた。中ソ対立に巻き込まれるのを回避しようとしていたが、カンボジア・中国との関係悪化→対ソ接近。しかし、ソ連は中越紛争への過剰反応によってアメリカとのデタントをこじらせるつもりはなく、介入は避けた。カンボジア侵攻→北京をバックにしたポル・ポト政権打倒によって経済復興に必要な環境整備をしたいという目的→ASEANは警戒心(現在、ベトナムの識者の間では、ポル・ポト政権打倒は間違っていなかったが、その後もカンボジア駐留を続けたことは誤っていたという認識が一般的らしい)。
・ASEANに対しては、ベトナムは東南アジア革命の旗手と自認する一方で、中国に対する警戒感から現実的な対応。
・ドイモイの進展→経済立て直しのためには国際的孤立から脱却する必要→カンボジア問題でも柔軟な態度をとるようになった。ソ連解体後は中国の改革開放をモデルとする。

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