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2010年10月 3日 (日)

【映画】「愛のむきだし」

「愛のむきだし」

 園子温監督の映画はそれなりに観ているものの(例えば、「桂子ですけど」「うつしみ」「自殺サークル」「気球クラブ、その後」)、何と言うか“濃すぎる”ところが私には肌が合わないなあ、という感じがあってしばらく敬遠していた。この「愛のむきだし」にしても評判が高いことは知っていたが、上映時間約四時間という長丁場に耐える自信もなくて観ていなかった。ところが、ふと気が向いてDVDで借りて観たところ、いや、これはすごいじゃないか。正直、はまった。

 家庭の崩壊とか新興宗教団体とか、現代社会にありがちな題材を使いながら、それらを換骨奪胎して一つの神話的叙事詩とでも言いたくなるくらいに独特な世界が展開されていく。物語の軸をなす三人のキャラクター、ユウ(西島隆弘)、ヨーコ(満島ひかり)、コイケ(安藤サクラ)のそれぞれがディオニュソス的でバランスを欠く、しかしその不調和そのものが園監督の相変わらず“濃い”テイストと絡み合うと圧倒的な力で迫ってくる。盗撮、パンチラ、勃起といったキーワードは下品ではある。しかし、人間の理屈ではどうにもならない下劣さ=“原罪”と捉え、この神話世界のカオスにおいて、下劣であろうと何であろうとやむを得ない衝動性そのものを人間存在の本来とみなし、葛藤しながらも肯定していく。ユウは“妹”であるヨーコを観ると勃起する。これも、エロス=ギリシア語の原義における、表面的な理屈では媒介され得ない無条件の直接的感覚と捉え返してみたとき、それはうざったいものにも、時には“変態”的ですらあるけれども、こうした直接性そのものが人と人の絆を結び付ける力ともなり得る。“妹”を新興宗教団体から奪回しようとするユウのパッションはまさしくそこにあった。つまり、「愛のむきだし」である。

 最近、満島ひかりファンになりつつあるが、彼女はこの映画でブレイクしたのか。制服姿で戦うシーンの表情など凛々しかった。なぜか古屋兎丸や宮台真司などもゲスト出演していた。

【データ】
監督・脚本:園子温
2008年/237分
(DVDにて)

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