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2010年10月22日 (金)

ロバート・A・スカラピーノ『アジアの激動を見つめて』

ロバート・A・スカラピーノ(安野正士・田中アユ子訳)『アジアの激動を見つめて』(岩波書店、2010年)

 東アジア政治論の泰斗ロバート・スカラピーノ。まだご存命だったとは驚いた。最近読んだジェラルド・カーティス『政治と秋刀魚──日本と暮らして四五年』(日経BP社、2008年)もなかなか面白かったが、このカーティスよりもさらに一世代上である。戦後アメリカにおける日本研究の第一世代が宣教師の息子だったE・ライシャワー、E・H・ノーマン(彼はカナダ人だが)たちとするなら、次の世代は第二次世界大戦での対日要員養成をきっかけとしてジャパノロジーにのめり込んだ。最近、中田整一『トレイシー──日本兵秘密捕虜尋問所』(講談社、2010年)でも取り上げられていたコロラド州ボールダーの海軍語学学校で養成が行われており、スカラピーノもそこで日本語を学んだ。他にもドナルド・キーン、エドワード・サイデンステッカーなどもここの出身である。彼らも回想録を出しているから(ドナルド・キーン『私と20世紀のクロニクル』[中央公論新社、2007年]、エドワード・サイデンステッカー『流れゆく日々』[時事通信社、2004年])、今度ひまな時にでも読んでみるか。

 日本、中国、朝鮮半島、弟子たちとの共同研究も含めて東アジア地域をテーマに多くの業績を残し、調査や学術交流のため各地を頻繁に訪問。足取りはさらにロシア沿海州やモンゴル、東南アジア、南アジアまで広く及ぶ。自身の生い立ちを語るよりもそうした各地の印象記の方が多く占め、それは戦後東アジア政治史私見といった趣があって興味深い。観察はオーソドックスでバランスが取れている。ただよく考えてみると、現在の私が当たり前のように感じることでも、冷戦の真っ只中では必ずしもそうではなかったわけで、それだけ著者の観察眼はしっかりと地に足の着いたものだったと言えるのだろう。末尾のまとめでは、国際主義の進展、他方でナショナリズムの政治利用、アイデンティティ模索としての共同体主義といった問題点を指摘、取り組むべき課題が「人間の安全保障」というキーワードで括られる。

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