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2010年10月27日 (水)

森聡『ヴェトナム戦争と同盟外交──英仏の外交とアメリカの選択 1964─1968年』、水本義彦『同盟の相剋──戦後インドシナ紛争をめぐる英米関係』

 森聡『ヴェトナム戦争と同盟外交──英仏の外交とアメリカの選択 1964─1968年』(東京大学出版会、2009年)は、アメリカによる北爆開始前の1964年12月からパリ和平交渉の始まる1968年にかけての時期、突出した動きを見せ始めたアメリカに対してイギリス・フランス・ソ連がどのような働きかけを行ったのかを分析、その上でアメリカが各国に対して抱いている戦略的価値・政治的価値・政府機構間の緊密性・信頼感といった要因の有無から働きかけにプラスの効果があったのかどうかを検証する。後者二つのリソースの有無によってイギリスはプラス、フランスは間接的な影響にとどまったと評価。また、ソ連の働きかけもイギリスと同様にプラスだったと評価され、個別具体的なイシューに限定すれば現状維持という共通した政策目標を持っていたことからアメリカはソ連に対して信頼感を持っていたのだと指摘される。同盟国ではあるにしても、フランスは共産化のリスクを冒してでも南ヴェトナム中立化→アメリカも撤退させた上でかつてのフランスの影響圏復活の意図を、イギリスは1966年のポンド危機から財政再建の必要→スエズ以東撤退の意図を持っており、それぞれ自らの国益にそって単独主義的な思惑があった。同盟関係にはあっても当然ながらそれぞれの国益という要因は無視できない。

 水本義彦『同盟の相剋──戦後インドシナ紛争をめぐる英米関係』(千倉書房、2009年)は、イギリスは自らの死活的利益があるわけではないインドシナ問題についてなぜアメリカに対して積極的な働きかけを行ったのか、第一次インドシナ戦争、ラオス内戦、そしてヴェトナム戦争に至るまでのイギリス歴代政権の対米関与を連続した事象として把握、分析する。イギリスとアメリカは緊密な同盟関係にはあったが、インド植民地独立後もイギリスの手に残ったマレー植民地の安定化、さらにはアジア・アフリカの新興独立国を抱えるコモンウェルス内の気運からしても、アメリカの単独行動によってインドシナ情勢をこじらせてしまうのは問題であり、イギリスは軍事協力を拒否し続けた。むしろアメリカにとって好ましくない働きかけを進めながら、長期的な観点に立って事態のソフトランディングを目指していた。イギリスの外交努力が必ずしもうまくいったわけではない。ただし、中立的な仲介者ではなく、緊密な同盟者だからこそ対外政策修正に向けて影響を一定程度まで及ぼすことも可能であった。こうした政治外交史的な分析を通して、一般論としての「同盟」のあり方について建設的な示唆を与えてくれるところが興味深い。

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