【映画】「悪人」
「悪人」
吉田修一の原作は未読。出会い系サイトで出会った二人、実は男の方は前に会った女を殺したばかりだった。男が葛藤する姿に女はほだされて一緒に逃避行に出る、という話。
女が暮らす田舎の国道沿いのアパートから見える風景は、畑だけが広がる何もない中を車が排気ガスを吐き出しながら通り過ぎ、ほこりっぽい。“孤独”は都会の専売特許のように描かれることもあるが、実際には田舎の方が孤立感は強いと社会学では指摘されている。都市文化が中途半端に浸透している一方で、物理的には人が少ないのだから淋しさがいっそうのこと強められる。出会い系サイトというのもそうした田舎の孤独感の方により適合的なのだろう。
登場人物のそれぞれが満たされない空虚さを抱えている。補い合える人を求めて出会っても、見栄やエゴが出てしまい、そうしたたまさかのいざこざから事件が発生してしまった。各自の事情を見ていくと、何か意図せざる因果に巻き込まれてしまったかのようにすら見えてくる。殺した側、殺された側、双方の家族の姿も含め、それぞれが一生懸命もがいているのに、そのもがきそのものでどつぼにはまってしまうやるせなさ、みじめさ。誰が悪いという以前に、そうした哀しさが映画としてよく描かれている。
深津絵里つながりで、森田芳光監督「(ハル)」がふと思い浮かんだ。私が観たのは渋谷のシネ・アミューズが開館して間もなくだったから十数年前になるのか。パソコン通信の草創期、相手の顔は知らないのにチャットで相手の考え方をよく理解しあった二人がラストで出会って「初めまして」というオチ。今から振り返ると無邪気なほどにさわやかな恋愛ドラマだが、時代もずいぶん変わったものだ。
【データ】
監督:李相日
脚本:吉田修一、李相日
音楽:久石譲
出演:妻夫木聡、深津絵里、満島ひかり、柄本明、樹木希林、他
2010年/139分
(2010年9月24日レイトショー、新宿バルト9にて)
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