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2010年9月20日 (月)

村嶋英治『ピブーン──独立タイ王国の立憲革命』

村嶋英治『ピブーン──独立タイ王国の立憲革命』(岩波書店、1996年)

・専制君主制から立憲君主制への移行、第二次世界大戦、そして相次ぐクーデターに翻弄されたタイの現代史についてピブーンを軸にして描き出す。その中でタイと日本との関わりにも触れられる。
・稲垣満次郎(初代シャム公使):通商条約を結ぶ→領事裁判権獲得。日本が西洋と対等であるためには西洋がシャムに対して持つのと同じ特権を求めざるを得ない、他方で同じ東洋人としてシャムの苦境に同情するというジレンマ。
・岩本千綱(『シャム・ラオス・安南三国探検実記』)→英仏と一緒になって利益を得よと主張。
・政尾藤吉→シャムの法律顧問、後にシャム公使。

・ワチラーウット王は絶対王政論者、国王こそが近代化へと向けて指導できるという立場で、自ら新聞に立憲派に対する反駁の論説を執筆。弟のプラチャーティポック王は政治に不慣れ。
・世界大恐慌→官吏の人員整理や新税導入で国内の不満、国王への批判→プラチャーティポック王は欽定憲法を検討。
・タイ国内の身分差別、欧州留学中に受けた人種差別→ピブーン、プラユーン、プリーディーなどタイ人留学生はタイの変革を志す→「民主主義」と「強国」が目標→1927年、パリで人民党を結成、その後、陸軍幹部派とも連携。
・1932年、無血クーデター、王政を批判する人民党宣言→国王は内戦を避けるため人民党の要求を受諾→憲法を発布→立憲革命。
・プリーディーの社会主義的な経済計画→国王の怒り、人民党も急進派と穏健派に分裂、プリーディーの国外追放→人民党が内訌する中、1933年6月、ピブーンが再びクーデター(このとき英仏への恐怖心から日本の協力を要請)
・1933年、満州国問題で日本に対する国連決議の際にシャムが棄権したのは、経済問題で日中双方との関係をこじれさせたくなかったため。
・1935年、国王が人民党を批判して退位、その際に議会制民主主義尊重を求める声明を出した→その後の民主化勢力がこれをスローガンに利用。プリーディーは帰国して再び政権参加。
・1938年、ピブーンが首相就任。ラッタニヨム(国家もしくは国民信条)を制定→シャムからタイに国名変更。タイ語の読み書きを義務化→全国民のタイ人化を意図(具体的には華僑系が標的)、中華学校・中国語新聞を弾圧。
・第二次世界大戦でフランス敗北、日本の仏印進駐→ピブーンはフランスに対して失地回復要求→タイの独立維持のためには英仏に奪われた領土を取り戻して大国化しなければならないという大タイ主義。イギリスと日本のどちらが勝つのか天秤にかけながら判断するのが基本的態度→枢軸国側優勢の情勢に便乗して日本に協力、イギリスからの失地回復を目論み、1942年1月25日に対英米宣戦布告。しかし、日本による事実上の占領に不満→1942年半ばから日本と距離を置き始め、1943年の大東亜会議には代理を派遣して自らは欠席。1944年から連合国側との連絡を模索し始めるが、議会内反ピブーン勢力が強まって首相辞任(戦後は戦犯として逮捕された)。他方で、プリーディーや「自由タイ」が連合国側との連絡に成功。
・1946年、アーナンタマヒドン王怪死事件の混乱でプリーディー首相失脚。
・1948年、ピブーンが首相として再登場。1951年の「銃声なきクーデター」で議会・政党を禁止→1957年、サリット、タノームなど陸軍のクーデターによりピブーンは日本へ亡命。1964年6月11日、神奈川県相模原市の寓居で死去。享年66歳。

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