【映画】「トイレット」
「トイレット」
レイはロボット・プラモデルのオタク、規則正しく変わらない日常を望む性格は周囲から冷たいと言われたりもする。モーリーはピアノの才能があるが、パニック障害で引きこもり。妹のリサは個性的な女子大生、気が強くて口が悪い。そんな三人兄妹の母親が死んだ。残されたのは大きな家、猫の“せんせー”、そして母が死ぬ前に日本から呼び寄せた“ばーちゃん”。三人兄妹とばーちゃんは言葉が通じないが、何だかんだとトラブル続出の中、次第に心を通わせていく。
観終わってストーリーをたどり返しても、実はそれほど特別な出来事がおこっているわけではない。それなのに映画全体に流れる独特なテンポというか、空気感というか、この中に巻き込まれて自然と見入ってしまうのが荻上映画の不思議な魅力だ。ばーちゃん役もたいまさこの、セリフはほとんどないのに表情だけですべてを語らせてしまう存在感がそこにうまくはまっている。荻上映画では見るからにうまそうな手料理が定番となっているが、今回はギョーザ。日常生活の中のささやかな喜びみたいなことを意図的に描こうとすると陳腐になってしまうのが通例だが、この映画でのギョーザは、いつもむすっとしたばーちゃんの心遣いが三人に伝わる良い道具立てになっている。ばーちゃんがトイレから出るたびにつくため息の謎解きが筋立ての一つの柱となるが、ウォシュレットを切り口になかなか気づきづらい文化的・慣習的相違に触れているのも面白い。
【データ】
監督・脚本:荻上直子
2010年/日本・カナダ/108分
(2010年9月10日、新宿ピカデリーにて)
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