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2010年9月 1日 (水)

【映画】「子猫をお願い」

「子猫をお願い」

 ソウル郊外のインチョンに育った女の子仲良し五人組。高校卒業後、それぞれの道を歩んでいたが、20歳になって久しぶりに集まった。ジヨンはテキスタイルの才能があるのに両親をなくし、病弱の祖父母を抱えて生活が思うようにならず、大手証券会社のOLとなったヘジュの当てつけるような高慢な態度に我慢がならない。物事を大らかに受け止めるテヒが二人の間に立つが、彼女も家族の中で疎外感を抱いていた。ある事件をきっかけにジヨンが逮捕されてしまった。釈放されたが身寄りをすべて失い、たった一人となった彼女を迎えに行ったテヒは胸にある決意を秘めている。──一緒に新しい世界へ行こう。

 自分にとってかけがえのないものは何か?という問いはもちろん青くさいが、その青くささが許されるのは少女時代の特権である。しかしながら、生活環境の異なる友人との落差、家族の束縛、経済的な問題、そういった現実社会の厳しさに直面して夢見る将来が許されなくなり、青くささがそのまま重苦しさへと変質していったとき、「青春」は終わった。それでも、漠然としてはいてもひたむきな何かへとぶつかっていきたいというパセティックな心情、テヒやジヨンが抱えているのはそうした焦りだろう。仲間内で子猫を受け渡すのは、それぞれが遠いところに行ってしまっても友達だという気持ちの表現か。テヒ役のペ・ドゥナは、屈託のなさそうなパーソナリティーの中でも時折浮かぶ憂い顔がとても印象的で、この映画の青くささと切なさとが流れる情感にぴったりだ。

【データ】
監督・脚本:チョン・ジェウン
2001年/韓国/112分
(DVDにて)

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