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2010年9月26日 (日)

黄英哲『台湾文化再構築の光と影1945~1947──魯迅思想受容の行方』、丸川哲史『台湾における脱植民地化と祖国化──二・二八事件前後の文学運動から』

黄英哲『台湾文化再構築の光と影1945~1947──魯迅思想受容の行方』創土社、1999年
・台湾省行政長官公署→政治建設、経済建設と同時に心理建設(=文化再構築工作)。台湾接収工作の一環として、教育や宣伝を通して日本文化の影響を一掃し、中華民族意識を植えつける。
・台湾省編訳館→館長として許寿裳が招かれた。彼は陳儀、魯迅と同郷で日本留学時からの親友。知日派であり、南京の政治風土が肌に合わず、また魯迅の伝記執筆の時間が欲しくて陳儀からの招請を受諾した。編訳館では中国語普及のため教科書等を編修。許の考え方は、日本の侵略的側面を否定する一方で、学術研究は高く評価、その継承は必要。台湾研究組には日本人学者を留用。1947年の二・二八事件後、陳儀は更迭→編訳館も廃止。
・台湾文化協進会→機関誌『台湾文化』。言語的転換の難しさから、台湾人執筆者は相対的に少ない。王白淵、楊雲萍、呉新栄、楊守愚、劉捷、呂赫若、黄得時など。日本人の国分直一、金関丈夫、岩生成一なども見える。しかし、二・二八事件等で台湾文化協進会のメンバーが落命、行方不明、投獄、逃亡。中国人の進歩的な知識人も迫害を受け、黄栄燦は獄死、許寿裳は何者かによって殺害されたほか、大陸へ逃亡した。
⇒台湾人の左翼系活動家たちと中国大陸から来た進歩的文化人との2年にも満たない協力関係が終わってしまう(その中には留用という形で台湾に残っていた日本人文化人も顔をのぞかせていた)。
・許寿裳は魯迅思想の伝播によって台湾で新たな五・四運動を期待、それを通して台湾人の国民性を日本人→中国人へと改造することを意図。他方で、龍瑛宗、楊逵、藍明谷(「光明報」事件で処刑)などの台湾人も魯迅紹介に努めたが、彼らはむしろ国民党支配下にある台湾という現実に目を向けることになり、許とは異なる方向性。
・国民政府は台湾人は中国語ができないことから日本の「奴隷化」とみなした→日文廃止という強行手段で「中国化」を図る。しかし、台湾人側からすれば、人間性までは「奴隷化」などされていないし、「日本化」=近代的文化、高度な資本主義化という側面があり、世界中の文化が日本語に訳されているのだから日本語を通して「世界化」への接近も可能だ、という反発。

丸川哲史『台湾における脱植民地化と祖国化──二・二八事件前後の文学運動から』明石書店、2007年
・日本敗戦から国府遷台までの間、政体として台湾と中国大陸とはつながっていた時期で、それを前提として中華民国という枠組みの中で民主主義体制への期待もあった。この当時において、台湾の脱植民地化=祖国化が課題と考えられていた→基準は中華民国側の対応による、しかし、国民党に批判的な進歩的知識人も台湾に来ており、こうした混乱した時代状況に対してポストコロニアル等の批評理論を援用しながら文学作品や新聞論説等の分析を通して考える。中台対立、台湾内のエスニシティ対立を自明視する視点へは批判的な立場。
・上掲黄英哲書を評価しつつ、同書が1947年の二・二八事件で叙述を終わらせており、この事件の挫折を乗り越えようとしたその後の文学運動への目配りがないことを指摘。
・国民党政権が持ち込んだ「中国」への幻滅によって「祖国化」は挫折。台湾人自身にとっての脱植民地化の願いとはすれ違ってしまっていた問題を指摘。
・楊逵→中国大陸から来た進歩的な外省人系知識人との結びつきに焦点を当てる。とりわけ、歌雷(『台湾新生報』副刊《橋》の朱筆、1949年の四・六事件で大陸へ追放)。
・台湾人作家が、「台湾=女性」という構図で大陸から来た人々との接触を主題化。
・大陸系文化人が導入しようとした抗戦文化→国民党の統治体制正当化のイデオロギーとして機能、日本側にいた台湾人にとっては困惑。

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