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2010年8月22日 (日)

王御風《圖解台灣史》

王御風《圖解台灣史》(好讀出版、2010年)

 先日、台北の書店に行ったとき新刊台に積まれていたので購入した本。台湾史の概説書で時代的テーマごとにバランスよく項目を配列、カラー写真や図版も豊富に収録されて読みやすい構成に工夫されている。例えば中国語を勉強中の学生さんが台湾史の概略を知りたい場合にはうってつけだ。

 序章は南島系原住民が広がっていた先史時代。第2章は大航海時代にやって来たオランダ人やスペイン人。第3章は鄭成功政権。第4章では清の版図に入ってから漢族系移住民による開拓。第5章は西洋列強の東アジア進出に対する台湾での動向。第6章は日本統治時代のプラス面とマイナス面。第7章では二・二八事件や国府遷台の混乱期。第8章は白色テロ、海峡情勢緊迫化の一方での経済的急成長。第9章は戒厳令解除と李登輝政権の民主化、国民党一党支配の終焉で政権交代の現代。以上の構成で台湾史のポイントが網羅的にまとめられている。

 こうした叙述構成から窺えるように、様々なエスニック・グループ(族群)が交錯した重層構造を持っているところに台湾の歴史的・社会的特徴が見出される(例えば、日本統治期に関しても肯定/否定という政治的次元ではなく、歴史的重層構造の中のあくまでも一要素として組み込まれていることが見えてくる)。それは、本質主義的に「台湾人」「中国人」といった単一の民族意識へと還元できる性格のものではない。日本語にも翻訳された周婉窈『図説 台湾の歴史』(濱島敦俊監訳、石川豪・中西美貴訳、平凡社、2007年→こちら)にしてもそうだが、このように多様な民族や文化が互いに入り混じった影響関係に着目する視点が近年の台湾史叙述のスタンダードとなっているように見受けられる。

 覚書的にメモ。大陸からの漢族系渡来民として泉州系、漳州系、客家系それぞれが来た順番に条件の良いところに定着、一番遅かった客家系が条件の悪い山地へと追いやられたという説明を以前に読んだことがあったが、その後の修正説では、泉州系は商人が多いので港の近く、漳州系は農業民なので平野部、客家系はもともと山地に暮らしていたので同様の環境の場所を選んだと考えられているらしい。牛肉麺は戦後にやって来た外省人の眷村文化から生まれたというのは初めて知った。

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