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2010年8月 8日 (日)

青井哲人『植民地神社と帝国日本』

青井哲人『植民地神社と帝国日本』吉川弘文館、2005年

・日本の植民地支配下の台湾や朝鮮半島に建てられた神社を都市計画論のコンテクストの中で捉える視点で、植民地支配によって都市空間・社会・文化が再編成されていく過程が検証される。著者の専門分野は建築史。
・日本内地の神社は平地での立地が多いのに対して、外地では山の中腹が多い。人為的構築物が集まった市街地だけでなく、山や森など自然的環境も含めて日本の植民都市の性格を捉える。神社鎮座地選定の議論そのものが、同時に既存の都市が持っていた歴史的経緯をいかに取り込んで位置付けていくかという都市論の性質を帯びていた。
・例えば、護国神社の創建(1930年代後半以降)→神社祭祀に必要な条件を検討しなおして空間を再設計する態度があった→建築の性格・機能が日本支配下で一元的・均質的な機能主義。同時に、地域主義と組み合わせて、それぞれの地方色も取り入れた。つまり、「地方」に固有のアイデンティティーを認めながら、それを「帝国」へと包摂していくイデオロギーが神社創建を進めた内務省神祇局等に見出される。
・朝鮮半島では、まず日本人居留民が創建→日韓併合後、植民地行政の中心としての京城に宗教的秩序形成の意図から朝鮮神宮→戦時下、神社祭祀と民衆の大量動員のため境内・社殿の改変が行われた。また、内地における支配一元化に合わせて植民地でも技術的一元化の波及。
・台湾の寺廟整理運動:従来の研究では皇民化運動など戦時下の宗教政策による強制という側面が強調されていたが、皇民化運動以前から寺廟は段階的に減少傾向にあった。皇民化運動だけでなく、寺廟の公的施設への転用・建設、市区改正事業など植民都市としての空間的再編成の流れの中で寺廟の処分があったことも捉える必要が指摘される。
・在来都市と植民都市計画という二重性を抱え込まざるを得なくなった台湾や朝鮮半島の人々は、これらをどのように受け止めて自分たちのものにしていったのかという問題意識が示される。
・近代の神社を宗教史ではなく建築史・都市計画史の観点から分析、その上で植民地権力によって再編成された都市空間の中で抱えざるを得なくなった伝統と(押し付けられた)近代との葛藤がどのように受け止められたのかという問題意識を示しているところに関心を持った。

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