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2010年8月23日 (月)

小林照幸『ひめゆり──沖縄からのメッセージ』

小林照幸『ひめゆり──沖縄からのメッセージ』(角川文庫、2010年)

 「ひめゆり学徒隊」の一員として生き残り、その体験を「ひめゆり平和祈念資料館」で語り続けている宮城喜久子さん。沖縄戦当時は本土にいたため実体験はないが、後輩をはじめ死んでいった人々の記憶を残していきたいと「沖縄戦記録フィルム1フィート運動」を進めてきた中村文子さん。凄惨な戦いに巻き込まれて、多くの人々が無残に死んでいった地獄絵図を語り続けるのはそれだけでも非常につらいことではあるが、それでも何とか後世に伝えていかねばならないという切迫した思い、それを胸中に秘めながら見つめ続けてきた沖縄の戦後史。

 「ひめゆり学徒隊」(「ひめゆり部隊」ではない)は沖縄戦の一つのシンボルとして小説や映画、テレビドラマの題材として繰り返し取り上げられてきたが、その脚色は戦場の実際からはかけ離れて宮城さんたちからすれば非常な違和感があった。何よりも惨い体験を強いられたのは「ひめゆり学徒隊」だけではない。これが「歴史」として定着してしまって良いものか?という葛藤もあったようだ。平和な社会での無関心というならまだしも、「聖戦」として美化されてしまうことには我慢がならなかった。そして、基地の問題。安全保障の議論は沖縄にとって極めて過酷なロジックをとる。それをどのように考えたらいいのか、私には正直なところ全く見当がつかない。ただ、本書に登場する宮城さんをはじめ戦場の実際を目の当たりにした人々が、そして記憶の中にある死者のそれぞれに切迫した哀しみが、寡黙な眼差しでじっとこちらを、つまり日本という社会と後世の人間たちを見据えていることは決して忘れてはならないだろう。優等生みたいな感想だが、そうとしか言いようがない。

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