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2010年8月19日 (木)

王嵩山《台湾原住民:人族的文化旅程》

王嵩山《台湾原住民:人族的文化旅程》遠足文化、2010年

 台湾社会論で「族群」(ethnicity)という用語を用いる場合、本省人と外省人との対立関係に注目して中国大陸との統一か独立かという議論に結び付くことがかつては多かった。ところが、最近は多文化主義の枠組みの中でそうした本省人と外省人との対立も相対化していく傾向が見受けられる。その際、漢族が渡来してくる以前から住んでいた南島語族(オーストロネシア語族)系の原住民に着目し、歴史的パースペクティブの中で台湾という一つの島には多様な人々が重層的に折り重なってきたことを強調、そうした観点から漢族同士の対立関係も相対化、多文化主義というさらに広い枠組みの中で原住民などマイノリティーも含めた共存が説かれる。

 かつて四大族群という表現で外省人の他、本省人として福佬系、客家系、原住民に区別されたが、原住民に関しては現在、アミ族(阿美族)、パイワン族(排湾族)、タイヤル族(泰雅族)、タロコ族(太魯閣族)、ブヌン族(布農族)、プユマ族(卑南族)、ルカイ族(魯凱族)、ツォウ族(鄒族)、サイシャット族(賽夏族)、タオ族(達悟族、orヤミ族〈雅美族〉)、クバラン族(噶瑪蘭族)、サオ族(邵族)サキザヤ族(撒奇莱雅族)セデック族(賽徳克族)、以上14の原住民が認定されている。原住民は人口としてはわずか数パーセントに過ぎないにしても、それぞれに来歴も異なり、「原住民」という一言では括ることのできないユニークで互いに相異なる文化や社会組織を持っている。

 本書は台湾原住民についての概説書だが、そうした文化的多様性を強調しながら、経済活動(食生活や交換経済、分配のための社会組織)、信仰形態、芸術活動(器具や住居形式にも世界観が表現される)などそれぞれの面で各民族に独特な生活世界を紹介していく。民族としての固有性は伝統生活の見直し・維持という方向性を取るが、他方で、社会生活の近代化(例えば、学校給食や貨幣経済の浸透)によってそうした伝統が変容していくというジレンマも抱える。収入を得るため観光資源として自分たちの伝統を売り物にすると、伝統の通俗化という弊害が当然にもたらされる。それでも、マイノリティーの存在意義を積極的に認めていこうという多文化主義が定着しつつあるのは現代台湾社会の興味深いところだ(「姓氏」のない族群もいるのだから、「請問貴姓」というあいさつを当然のように使うのも差別的だという指摘もあった)。

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