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2010年8月 1日 (日)

【映画】「遠い道のり」

「遠い道のり」

 ユン(桂錀鎂:グイ・ルンメイ)が引っ越したばかりの新居にたびたび届く封筒。前の住人宛だが、気になって開封してみると、入っていたのはカセットテープ。「Formosa(台湾)の音」というラベルが貼られている。社内不倫に嫌気がさしていたユンは、ふと思い立ってこの音が録音された場所を探しに行く。そして、このテープを送り続けている録音技師の青年。どこか破綻した精神科医。大都会・台北の生活に疲れた男女、それぞれ互いに見知らぬ彼ら三人の旅路は、自然豊かな台湾東岸の町・台東で交錯する。

 台東付近の海や森が美しい。都市生活の疲れや気だるさから逃れるように「癒し」を求める人々が風光明媚な田舎の温もりを求めてさまようという筋立ては、都市化の進んだ先進国(台湾も含めて)ではありふれたもので、この作品もストーリー的にそれほど深みを感じさせるわけではない。ただ、「音」という道具立ては面白い(韓国のホ・ジノ監督「春の日は過ぎゆく」を思い浮かべたが)。言葉はなくても、他人同士でも、音を通してつながり合えるという意味合いか。

 私が関心を持ったのは以下の点。第一に、このように「都市」的感覚を全面に打ち出した映画が台湾では普通になっていること。第二に、その「都市」的感覚の不自然さを対照的に際立たせる道具立てとして原住民族が取り上げられていること。彼らの歌や踊りはフレンドリーな「素朴さ」の演出だ。「都市」目線の原住民族像である。第三に、映画のモチーフとなっている「Formosa(台湾)の音」→台湾の風土をもう一度見直して感じ取ろうという趣旨と受け取れる。郷土としての台湾意識は、20年以上前なら公定史観としての中華意識とぶつかりかねない微妙なものであったらしいが、現在ではこうした「癒し」系映画でも政治的な硬さもなくごく当たり前な前提としてなじんでいることは、時代がだいぶ変わったのだなあと感じさせる。

 主演のグイ・ルンメイは「藍色夏恋」に出ていた娘だったのか。気づかなかった。

【データ】
原題:最遥遠的距離/英題:Most Distant Course
監督:林靖傑
2007年/台湾/113分
(DVDにて)

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