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2010年7月 2日 (金)

安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』

安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』光文社新書、2010年

 生産コストを抑制しつつも利潤を上げ続けるためにまず切り詰められるのは人件費であり、とりわけ制度的保障のない外国人労働者は雇用の調整弁として厳しい立場に置かれる。本書は中国人労働者と日系ブラジル人労働者へ取材、彼らに身を寄り添わせながらその発するうめき声を聞き取ろうとしたルポルタージュである。

 研修生という名目で低廉な労働力としてこき使われる中国人の若者たち。彼らの表情の暗さは他の外国人労働者と比べて際立つ。研修生として来日するだけでも事前に借金をしており、途中で帰国したら負債が残るだけ。日本の雇用者は彼らが絡め取られているそうした見えない鎖を脅しの切り札に使って過酷な労働を強いており、文字通り奴隷労働に近い。中国側の送り込み機関でも、彼ら若者たちが従順に働くように規律教育をしているというのも驚いた。日本側の受け入れ機関、中国側の送り出し機関の双方がつながった「ビジネス」としてのからくりが指摘される。出稼ぎに来た日系ブラジル人も、景気が悪くなると追い返しに直面している。労働組合も必ずしも彼らを助けるわけではない。他方で、彼らを雇用していた中小企業も経営が不安定だからこそ低廉な労働力を求めていたという事情もあるわけで、経済的に弱い立場の者がもっと立場の弱い者へしわ寄せしていく構図が本当にやりきれない。

 本書の趣旨とは直接には関係ないが、第二次世界大戦当時、ブラジルの日系社会で、日本は勝ったと信じる人々=「勝ち組」と日本の敗戦を冷静に認識した人々=「負け組」という対立があったのは知っていたが、互いにテロをやって犠牲者を出すほどの対立だったとは知らなかった。

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