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2010年7月 5日 (月)

彦坂尚嘉・五十嵐太郎・新堀学編著『空想 皇居美術館』

彦坂尚嘉・五十嵐太郎・新堀学編著『空想 皇居美術館』朝日新聞出版、2010年

 大英博物館、ルーヴル美術館、故宮博物院、こういった世界の大美術館に匹敵するものが日本にはない。敷地はある。東京のど真ん中に。皇居である。そこで、天皇には京都御所へお帰りいただき、からっぽになった皇居をそっくりそのまま世界一の大美術館にしてやろう。そして、日本中の超一流国宝をかき集めて収蔵品にする。現代アートなど入れない。明治維新以前、前近代のものだけで日本をアピール。1,000メートル級の世界一の巨大建築も建ててやれ、そうすりゃ公共事業で景気対策にもなるぜ──。

 皇居を一大美術館にするならどうしたら面白いか?という思考実験。もともとは五十嵐太郎たちのリノベーション・スタディーズで彦坂尚嘉が漏らした皇居再利用というアイデアが発端らしいが、これをもとにしたプランを2007年の第1回リスボン建築トリエンナーレに出展。帰国後のシンポジウム(五十嵐、御厨貴、南泰裕、彦坂、鈴木邦男、原武史、新堀学)や寄稿(辛酸なめ子、藤森照信、萩原剛、鈴木隆史、暮沢剛巳)・座談(高岡健、宮台真司、彦坂)では各自それぞれが奔放に思い付きを語る。

 皇居の敷地は意外に広くて、大英博物館、ルーヴル美術館、メトロポリタン博物館、バチカン美術館、ウフィッツィ美術館、ベルリン・ムゼウムインゼル、ついでにクフ王のピラミッド、これら全部が同時に納まってしまう。東京の中心は空虚であるというロラン・バルトの指摘は東京論で必ずと言っていいほど引用されるが、実は何もないわけではない。語られるのを拒む暗黙のタブー、すなわち皇居があるということだ。美術的・建築論的面白さへの非政治的追求ではあっても、天皇論を軸に日本文化、日本の近代という大問題を避けることはできない。色々な議論の切り口や意味づけのロジックがあり得るのが面白い。なお、皇居を公園にしようというプランをこれまでに提案したのは丹下健三しかいなかったらしい。

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