« 前嶋信次『玄奘三蔵──史実西遊記』、前田耕作『玄奘三蔵、シルクロードを行く』 | トップページ | 白波瀬佐和子『生き方の不平等──お互いさまの社会に向けて』 »

2010年7月 3日 (土)

【映画】「闇の列車、光の旅」

「闇の列車、光の旅」

 国境を越えてアメリカを目指す中南米の移民たち。隣国メキシコばかりでなく、ホンジュラス、グァテマラなどからもメキシコを通って陸路をたどる人々が多いらしい。父、叔父と一緒にアメリカへ行く途中のサイラ。「組織」を裏切って追われる身となったカスペル。移民のあふれかえる列車の屋根の上である事件をきっかけに出会った二人は、共にアメリカ国境の川までたどり着くのだが…。

 夜中、光を放つ列車が轟々たる音を響かせて駅へと到着する厳かなシーン。列車の屋根から見晴るかす沿線の牧歌的風景。山上にマリア像が見えると人々は居ずまいを正して十字を切る。時に詩情さえ感じさせる映像的美しさの一方で、彼ら移民たちがたどらざるを得ない「冒険」は文字通り命がけだ。しかも、旅路の果てにも厳しい生活が待っていることを冷静に知っている。残っても、進んでも、どちらであっても希望はない。ならば、取りあえず行くしかない──。

 絶対的貧困のため生きていく術のない人々。助け合って生きていかねばならないが、そのための寄り合いとして一つは家族。もう一つはカスペルが所属していたようなマフィア組織。ただしそれは、排他的暴力性と表裏一体をなす団結心である。人的ネットワークという点でも貧困と暴力とが織り成している負の連鎖。新天地に放り出されたサイラは果たして新しい家族を見つけ出すことができるのか。投げやりになってもおかしくないつらさ、その中にあっても二人がかわす眼差しのひたむきさが美しい。

【データ】
原題:Sin Nombre(名無し)
監督・脚本:キャリー・ジョージ・フクナガ
2009年/アメリカ・メキシコ/96分
(2010年7月3日、日比谷・TOHOシネマズ・シャンテにて)

|

« 前嶋信次『玄奘三蔵──史実西遊記』、前田耕作『玄奘三蔵、シルクロードを行く』 | トップページ | 白波瀬佐和子『生き方の不平等──お互いさまの社会に向けて』 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197828/48790186

この記事へのトラックバック一覧です: 【映画】「闇の列車、光の旅」:

» 『闇の列車、光の旅』 これは銀河鉄道ではない [映画のブログ]
 闇の中から浮かび上がる巨大な影。  いかめしい貨物列車。  一縷の望みを託した人々が、群がり、しがみつく。  なるほど、この逃亡劇... [続きを読む]

受信: 2010年7月 9日 (金) 19時33分

» 映画「闇の列車、光の旅」自分が求めるなら何処までも行け! [soramove]
「闇の列車、光の旅」★★★★ パウリーナ・ガイタン、エドガー・フロレス出演 キャリー・ジョージ・フクナガ監督、96分 、2010年7月10日公開、2009,アメリカ、メキシコ,日活 (原題:SIN NOMBRE)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 何があるにしろ自分の国を離れ 生きていかないといけないという現実、 よりよい生活を求めるというのは分かるが 本当に生まれ育った場所で生き... [続きを読む]

受信: 2010年7月19日 (月) 10時08分

« 前嶋信次『玄奘三蔵──史実西遊記』、前田耕作『玄奘三蔵、シルクロードを行く』 | トップページ | 白波瀬佐和子『生き方の不平等──お互いさまの社会に向けて』 »