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2010年7月19日 (月)

吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ──有効需要とイノベーションの経済学』、根井雅弘『ケインズとシュンペーター──現代経済学への遺産』

 シュンペーターの言う企業者によるイノベーションは、既存の静態的な均衡状態を撹乱、この変革から新しい均衡状態に至るまでの適応過程として不況を捉える。つまり、経済循環に必要なプロセスとして不況を位置付けており、極論すれば放っておいても構わない。対してケインズは有効需要の不足として不況の問題を捉え、政策的働きかけの必要を指摘。吉川洋『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ──有効需要とイノベーションの経済学』(ダイヤモンド社、2009年)、根井雅弘『ケインズとシュンペーター──現代経済学への遺産』(NTT出版、2007年)は、このように全く議論がすれ違うかのような二人の接点を見据えながら、有効なヒントを模索する。

 吉川書は最終章の結論部分で「需要創出型のイノベーション」というアイデアを提言しているが、本書の大部分は二人の学説形成の時代的背景を解説した、いわば学説史的な内容である。タイトルとかみ合ってない印象もあるが、私のように理論名や学者名など固有名詞は雑然と頭の中にたまっていても相互の関係がいまいちつかめていない経済学オンチが頭を慣らす上では読みやすいと思った。根井書もコンパクトに理論解説しながら、ケインズは短期理論、シュンペーターは長期理論という二分法を打ち破るという点で上記吉川のアイデアを高く評価している。サミュエルソンの新古典派総合(新古典派経済学とケインズ経済学の融合)は総合ではなくあくまでも並存に過ぎないと根井書では指摘されているのでメモ。

 ケインズの言うアニマル・スピリット、シュンペーターの言う企業者精神、これらがどのようなコンテクストの中で語られているのかを理解したいという関心が私にはあるのだが、その前提としてやはり経済学的理論構成もきちんと理解しておかねばならない。そうしないといい加減な印象論に陥ってしまう。面倒くさいな。

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コメント

 
先日は、ポロッとやってしまったコメントをそのままに…、失礼しました。訳の解らん熱のその行き処に揺れていた、大馬鹿14才の読書の思い出。


さてさて、このトピックを読ませて頂いて、「経済理論」のあるいは、そこに寄って立つらしきさまざまな「表現」、

これらを考える叩き台として良い著作ではないかと思ったのが、
山崎憲「デトロイトウェイの破綻…日米自動車産業の明暗」(旬報社)


目次より

1980年代以降の経営努力

揺らぐ社会保障基盤

ニューディール型を壊したもの

労使関係はどこに向かうのか


クリント・イーストウッド「グラントリノ」ではないですが、
各メーカーのエンジンやブレーキの開発が表現しようとしていたドライブとそれが向かっていた時代を重ねあわせたような繊細な仕事を読んでみたいものです。

投稿: 山猫 | 2010年7月22日 (木) 23時42分

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