« ジョゼフ・R・レヴェンソン『梁啓超と近代中国の精神』 | トップページ | ジョシュア・A・フォーゲル『Articulating the Sinosphere:時空間における日中関係』 »

2010年6月 3日 (木)

松本健一『日本のナショナリズム』

松本健一『日本のナショナリズム』ちくま新書、2010年

 もともと、政権交代以前から民主党中堅議員向けに行われていた講義が本書のもとになっているらしい。東アジア共同体構想や憲法改正論などへの関心によるのだろう。ナショナリズム論を基本的な視座とした近代日本政治思想史概論といった体裁で、この方面について知りたいと思う人には手頃な入門書だと思う。齋藤隆夫と北一輝を取り上げ、一見対照的な二人に見えるが、それぞれのロジックをよく吟味してみると議会政治正常化等の目的のため天皇というシンボルを動員するというリアリズムの発想で共通性があるという指摘に興味を持った。

 ナショナリズムをめぐる困難の一つは、国民国家建設という課題はその当時においては正当であったにしても、それがある程度まで完成されると帝国主義へと向かいかねない危険をはらんだという二面性に求められる。あるいは、外をたたくことで内部の結束を固めようという発想。大隈重信内閣のポピュリズムが対華21か条要求をつきつけ、中国からの不信感を招き、さらにはその後の侵略戦争へつながったと把握される。こうした近代日本の教訓を踏まえ、「アジア共同の家」という著者自身の構想提言に向けて政治的アイデンティティの再定義という問題意識が示されている。

|

« ジョゼフ・R・レヴェンソン『梁啓超と近代中国の精神』 | トップページ | ジョシュア・A・フォーゲル『Articulating the Sinosphere:時空間における日中関係』 »

近現代史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197828/48521255

この記事へのトラックバック一覧です: 松本健一『日本のナショナリズム』:

« ジョゼフ・R・レヴェンソン『梁啓超と近代中国の精神』 | トップページ | ジョシュア・A・フォーゲル『Articulating the Sinosphere:時空間における日中関係』 »