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2010年6月24日 (木)

梅田百合香『甦るリヴァイアサン』

梅田百合香『甦るリヴァイアサン』講談社選書メチエ、2010年

・ホッブズ思想の読み直しを踏まえて、彼の思想に対する現代の誤解を解きほぐし、現代思想との比較を試みる。社会契約説の前提として、利己心という通俗的理解ではなく、神の意志→必然としての自己保存という人間観が一つのポイント。
・ホッブズとアレントとの比較。第一に、ホッブズの言う神=自然によって強いられる「生命の自己保存」という必然に従属した存在としての人間理解→「生命を最高善」とする抽象的で実効性のない(普遍性を装いつつも国民国家の枠内でしか保障されない)近代的観念の祖としてアレントは批判。第二に、「自由意志」の独我論には「他者」の契機がないというアレントの問題意識→ホッブズは意志の自由と活動の自由とを区別(人間の内面は問わない→近代的国家論)し、「自由意志」を社会契約の基礎に置かなかった点で、二人の共通点を指摘。ただし、ホッブズは神に対する義務を強調したのに対し、アレントは「他者」との相互性を重視。
・レオ・シュトラウスのホッブズ論。実証主義・歴史主義に基づく社会科学はニヒリズムに陥ったというシュトラウスの近代批判の問題意識→ホッブズの中に絡まりあう法的原理、道徳的原理、自然主義的原理のうち、シュトラウスは無神論的自然主義を批判するあまり道徳的要素を探る方向へ向かった。(なお、レオ・シュトラウス『ホッブズの政治学』は以前に読んだことがある→こちら
・ネグり=ハートの近代批判としての〈帝国〉論との比較。リヴァイアサン=国民国家の影響力は依然として残っている点を指摘。
・国際関係論におけるリアリズムやネオコンが言及する「自然状態」はただの戦争状態なのか?→実際の国際関係ではすでに各国家が形成されている。国家間関係は「自然状態」だとしても、それぞれの国家内では自然法と平和が成立しているという重層構造になっており、「まったくの自然状態」とは言えない。
・情念に衝き動かされる人間の本性を善悪の価値判断ではなくあるがままに受け止めようとするがホッブズのリアリズム。彼の思想においては、恐怖=自然権=戦争、希望=自然法=平和、こうした二つの方向性が理論上対等に設定されている。

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