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2010年6月19日 (土)

堀江則雄『ユーラシア胎動──ロシア・中国・中央アジア』

堀江則雄『ユーラシア胎動──ロシア・中国・中央アジア』岩波新書、2010年

 海のシルクロードが開けて以来、世界史の表舞台から遠ざかっていたユーラシア内陸部。清、ロシア、イギリスのグレート・ゲームでは客体として翻弄されるばかりだったこの地域の台頭に注目した現状報告。

 ポイントは、第一に、石油・天然ガスなど潤沢な埋蔵資源。第二に、ソ連邦崩壊によって誕生したチュルク系諸国家。この流れの中でウイグルの問題にも触れられる。国民国家への模索はナショナリズムの負の側面を引き起こしてもいるようなのが気にかかる。中央アジアの大国を目指すウズベキスタン。イラン系のタジク・ナショナリズムは反ウズベク感情をテコにしている。つい先日もキルギスでウズベク系住民との衝突が起こったばかりだ。それから、言語ナショナリズム。ネポティズムも国民国家形成を妨げる。

 資源輸出は外に需要があるから成立するという意味で他律的であるし(中国への輸出構造が経済的支配につながるのではないかという懸念もあるようだ)、国民国家形成も先行きが険しい。そうした点を考えると、本書が示す西欧近代に対する転換点としての「ユーラシア胎動」という問題意識は興味深いにせよ、あまり説得力は感じられなかった。本書の内容と直接には関係ないが、ロシアにおけるネオ・ユーラシア主義の高まりというのは、西欧近代へのアンチとナショナリズム感情が絡まりあっている点で、かつての日本における「近代の超克」論とイメージ的にダブってくる。

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