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2010年4月 7日 (水)

吉澤誠一郎『愛国主義の創成──ナショナリズムから近代中国をみる』

吉澤誠一郎『愛国主義の創成──ナショナリズムから近代中国をみる』(岩波書店、2003年)

・近代中国において具体的な形を取り始めた国家としての一体感=ナショナリズムをめぐる諸相が梁啓超を縦糸として検討される。清朝体制に対する批判から革命派のナショナリズムが現われたという構図ではなく、清朝官僚・革命派の双方が実は不可分一体の中国という発想を持つ点では同じであったことが示される。清朝による一定の政治的統合の実態、列強対峙の国際環境など所与の条件が素材として組み合わされる中で愛国主義の言説が当然視される風潮がすでに醸成されていたことがうかがわれる。
・アメリカでの中国人移民排斥→中国でボイコット運動、本籍地アイデンティティによる民衆の愛国運動。
・梁啓超:中国人は「朝廷あるを知って、国家を知らない」「個人あるを知って、群体あるを知らない」→中国史叙述の史学革命、紀年をめぐる議論。
・辮髪を剪る:①辮髪は不便であり、富国強兵のため身体的能動性に富んだ男性像=「尚武」の理想。②外国から軽蔑される。③満洲王朝による強制からの脱却(例えば、章炳麟が断髪により反満の意思表示)。→③に注目されることが多いが、これらの絡まりあいとして理解。
・「愛国ゆえに死す」という言説:戊戌の政変での譚嗣同の死を梁啓超や康有為らは政治的正当性の主張の中で顕彰→政治的宣伝、追悼の政治的操作性→国に殉じた者を祭ろうという発想は革命派・清朝官僚の双方に共通。政治的大義のために死を顕彰する言説・儀礼がこの頃から整備され、さらなる政治的死を誘発する。

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