郭沫若『歴史小品』
郭沫若(平岡武夫訳)『歴史小品』(岩波文庫、1981年)を初めて読んだのは大学一年生のときだったか。あまり良い印象はなかった。思い立って久しぶりに再読してみたが、やっぱりつまらない。老子、荘子、孔子、孟子、始皇帝、項羽、司馬遷、賈誼のエピソードをもとにした短編八本。文章としては読みやすいが、偶像破壊的な筆法がわざとらしくて嫌味に感じられる。これらの作品が書かれた1920~30年代において、伝統拘束的な思想傾向に対して啓蒙しなければならない、そうした政治的手段としての文学という問題意識があったであろうことは理解する。ただし、当時の時代思潮を知る資料としてならばともかく、現代の人間が読んで何か感じ入るような深みがあるわけではない。
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