吉澤誠一郎『天津の近代──清末都市における政治文化と社会統合』
吉澤誠一郎『天津の近代──清末都市における政治文化と社会統合』(名古屋大学出版会、2002年)
・「近代世界システム」への包摂=近代化という視点ではなく、中国における伝統の連続性を強調して西洋中心主義から脱しようという志向でもなく→理念化された「西洋近代」を世界標準とみなしつつ、相互作用的に「類似する趨勢」に向かったという意味で「近代性」を捉える。こうした視点によるケース・スタディとして天津という都市における具体的な歴史に注目する。
・団練の結成、天津教案(反キリスト教暴動等)への火会(消防団)の関わり、善堂(社会福祉・慈善施設)、巡警組織、反アメリカ運動、市内交通をめぐる混乱、軍事的危機意識による「尚武」の理念→体育社、などのトピックが検討される。
・①政治参加と公共性(自治組織やジャーナリズムの成立)、②社会管理の進展(社会統制の手段としての団練の編成において排外的心情が動員された→開港場では危険→義和団事件後は巡警組織の導入)、③国家意識の深化と帰属意識(1905年の反アメリカ運動→「中国人」としての団結意識→出身地をこえた都市社会の共生という論理をとる側面もあった)、④啓蒙と民衆文化、などの問題意識が示される。
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