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2010年4月12日 (月)

「休暇」

「休暇」

 刑務官の平井(小林薫)は子連れの女性(大塚寧々)と再婚したばかり。ところが、新しい家族三人で温泉旅行に出かけたのにずっと上の空。その休暇は、絞首刑執行の介助役を務めた代償として与えられたものだった。彼の脳裡では死刑囚・金田(西島秀俊)のことが思い返されている。

 この映画では死刑執行に至るまでの一連のプロセスがたどられる。公的には死刑囚であっても、日常身近に接する刑務官にとっては一対一の生身の人間である。死にゆくことが定められた死刑囚と向き合うことは非常にセンシティブであり、しかも執行に立ち会うことのストレスは尋常なものではない。

 原作は吉村昭の短編(『蛍』[中公文庫]所収)。吉村の現代小説には受刑者や出所者など社会的に負の烙印を押された人間の葛藤を描いたものが多いが、この作品は刑務官の方に焦点が合わされている。歴史小説での史料渉猟には定評のある吉村のことだから刑務官にもしっかり取材しており、映画製作者も考証はしているはずだから、ここで描かれている心情はリアルに近いものなのだろう。

 死刑執行の場面を描いたアメリカ映画として、ティム・ロビンスが監督、死刑囚をショーン・ペンが演じた「デッドマン・ウォーキング」(1995年)、シャロン・ストーン主演の「ラストダンス」(1996年)などを観た覚えがある。これらでは死刑執行に至るまでの当事者の明らかに激しい感情の高ぶりが印象に強い。対して、こちらの「休暇」の場合には厳粛にしめやかな空気が一貫しており、その中での抑えられた表情そのものから間接的に感情的高ぶりがうかがえてくる。文化の違いか、視点が異なるからか。

【データ】
監督:門井肇
出演:小林薫、西島秀俊、柏原収治、大杉漣、大塚寧々、他
2007年/115分
(DVDにて)

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