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2010年4月 3日 (土)

川本三郎『ミステリと東京』

川本三郎『ミステリと東京』(平凡社、2007年)

 文学作品というのは必ず舞台があるわけで、その舞台となっている生活空間、たとえば都市と作品内容との関わりは文学研究のテーマとしてよく取り上げられる。逆もまた然り。本書は、ミステリ小説の中の描写を通して東京という都市の街並や世相の変化を垣間見ていく。『東京人』連載がもとで、中にはすでに読んだ覚えのある章もあった。海野十三、久生十蘭、松本清張から京極夏彦、宮部みゆき、恩田陸まで幅広く取り上げられるが、肝心な江戸川乱歩がないのはすでに松山巌の名著『乱歩と東京』があるからか。

 郊外住宅地としての東京の生活圏の拡大。下町的人情と都会的匿名性。新宿歌舞伎町の多国籍化。ポイントを挙げれば読み手の関心に応じて色々と引き出せるだろうが、それらを分析というのではなく、小説中の描写を一つ一つ引きながら追体験していこうという筆致なので気軽に読める。全共闘世代的ノスタルジーが鼻につく箇所もたまにあるが著者自身の経歴による思い入れがにじみ出ているのだろう(このあたりに関して世代的に異なる私自身としては、感性的にも思想的にも共感の余地が全くないのだが)。高度経済成長直前期、地方からの上京者が抱えた哀歓には連載時(小杉健治の章)から興味が引かれていた。

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