「台北に舞う雪」
「台北に舞う雪」
大陸出身で新人歌手として台北でデビューしたメイ(トン・ヤオ)。精神的ストレスから声が出なくなり行方をくらませた彼女は、山あいの田舎町・菁桐でモウ(チェン・ボーリン)と出会う。孤児として町全体を家族のように思う彼の優しさに接して、メイは徐々に声を取り戻していく。
ストーリーは可もなく不可もなくという感じ。それよりも、よく計算された美しい映像がこの映画の見所か。フォ・ジェンチイ監督はミュージック・プロモーション・ビデオのように凝った映像を作れる人なんだな。時折、大都会・台北のシーンも挿入され、菁桐の町の穏やかな空気が対照的に際立たせられる。その中にたたずむ、チャン・ツーイー似の清楚な美人トン・ヤオの憂い気な表情が印象的だ。
菁桐には一度行ったことがある。日本統治期に建てられた駅舎の屋根の苔むした緑色が最初に目にとまり、かつて鉱山で栄えた時代の線路や橋脚なども木々の中に埋もれ、町全体が緑の中に静かに沈んでいるという印象があった。駅の線路脇から丘をのぼる階段が目に入って登ってみようと思ってやめた覚えがあるのだが、その上の集会スペースが映画終盤のコンサート会場になっていた。天燈は手前の平渓で季節はずれだが観光客向けのデモンストレーションとして一つ空に飛ばしていくのを見た。菁桐に到着した時はすでに夕方であまり歩き回らずに引き揚げたのだが、映画を観ると、思っていたよりも大きめな町なんだな。あるいは、平渓でもロケをしたのか。平渓は線路の両脇に商店街が並んでいる風景が印象に残っている。
【データ】
原題:台北飄雪
監督:霍建起(フォ・ジェンチイ)
原案・脚本:田代親世
2009年/中国・日本・香港・台湾/103分
(2010年3月14日、シネスイッチ銀座にて)
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