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2010年3月 7日 (日)

山崎朋子『朝陽門外の虹──崇貞女学校の人びと』

山崎朋子『朝陽門外の虹──崇貞女学校の人びと』(岩波書店、2003年)

 北京の朝陽門外、かつてスラム街だった地域に1920年から45年まで日本人クリスチャンの経営する女学校があった。五四運動、盧溝橋事件と日中関係の難しかった時期に設立・運営にあたった清水安三と彼に協力した人々の姿を描いたノンフィクション。戦後、接収されて陳経綸中学校となっている現在でもこの地で彼の名前は記憶されているという。

 伝道に赴いた北京で見たスラム街の子供たち、特に売春等に身を落とさねばならない少女たちのため、手に職をつけて自立して生きていけるように読み書きと手芸を教える無料の学校を設立。教育事業であると同時に、彼女たちの縫ったハンカチやテーブルクロスなどを販売して収益を上げるという方法は社会起業の先駆のようで興味深い(実際、清水は近江兄弟社とも関係があった)。この工読女学校は後に中等教育機関として崇貞女学校に発展。中国人だけでなく日本人や朝鮮人の子女も入学したらしい。さらに天橋のスラム街でも同様のセツルメントを行なった。敗戦後、日本に帰国した清水は桜美林学園を設立。この大学には中国語学科があるが、このような背景があったというのは初めて知った。工読女学校の最初から協力してきた羅俊英という女性が、何の政治性もないにもかかわらず、戦後、漢奸として投獄され非業の死を遂げたという悲劇には何とも言葉がない。

 細かい話だが個人的な関心としてメモしておくと、崇貞学園の理事の一人に台湾出身の音楽家、当時は北京師範大学で教壇に立っていた柯政和の名前があった。江文也を北京師範大学へ招聘した人である。

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