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2010年3月13日 (土)

中薗英助『北京飯店旧館にて』『北京の貝殻』

中薗英助『北京飯店旧館にて』(筑摩書房、1992年)、『北京の貝殻』(筑摩書房、1995年)

 日本軍占領下の北京、放浪語学生として日本人・中国人の友人たちと文学談義をたたかわせた日々の追憶をつづった小説。40年以上たって再訪、現在の街並の変貌に戸惑いつつも、その中にも所々残るたたずまいから脳裡が刺激されて立ち上る記憶。見覚えのある街路や樹木をきっかけに、もう出会うはずのない友人知己と幻の中で邂逅するかのように往年の青春期を振り返る。憲兵隊に殺害されたと聞く親友だった演劇人、大東亜文学賞を受賞したがため後に漢奸作家として迫害を受けることになる袁犀(戦後は李克異と名乗る)、頽廃的な曲を書いたとしてやはり文革で迫害を受ける作曲家の劉雪庵、気がかりだった人々のことを調べて回るが、納得のいく理解がなかなか得られないもどかしさ。日本軍占領下における北京の文化的シーンが著者自身の生身の出会いや葛藤を通して描かれる。一対一の人間同士として付き合っていたつもりでも、侵略者の一員である自分と、中国人の友人との間によぎっていた影、いつまでも残っていた心のトゲを見つめなおしていく。

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コメント

記者時代の中薗英助氏の民族、国境を目の当たりにした彷徨「夜よシンバルを打ち鳴らせ」

以前は文庫に入っていたのに、もったいない。


その後のスパイ小説やルポルタージュの展開。


遠藤誉氏とともに、私自身の「読み込み」が落ち着こうとしている“ところ”を揺さ振り続けます。

投稿: 山猫 | 2010年3月13日 (土) 10時26分

実は中薗英助の作品は意外と読んでいなくて、例えば『鳥居龍蔵伝』などもずっと気になっていながら未読です。スパイ小説もののイメージが強くてスルーしていたのですが、日中関係ものを結構書いているのを最近再認識した次第です。

投稿: トゥルバドゥール | 2010年3月13日 (土) 22時09分

中園英助、世代的にチト古い私は若い自分ずいぶん読みました。『何日君再来物語』もいいですよ。

投稿: NaokoMizutani | 2010年3月14日 (日) 02時05分

『何日君再来物語』はちょうど図書館から借りてきたばかりです。今まで視野に入っていなかったので、今さらながら、私としては結構「発見」でした。

投稿: トゥルバドゥール | 2010年3月14日 (日) 19時47分

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