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2010年3月15日 (月)

中薗英助『何日君再来物語』

中薗英助『何日君再来物語』(河出書房新社、1988年)

 私は、李香蘭はもちろん、テレサ・テンもすでに歴史上の人物という感じでピンと来ない世代である(「アジアの歌姫」という表現を見ると、フェイ・ウォンなどがまず頭に浮かんでしまう。こちらもすでに旬は過ぎているとは思うが)。当然ながら、「何日君再来」(いつのひきみまたかえる/ホー・リー・チュン・ツァイ・ライ)という曲も聴いたことはない。それでも、たった一つの歌をめぐってこんなにミステリーがまとわりついているのかと、背景を知らないだけにかえって新鮮な興味で読んだ。

 周璇、李香蘭、渡辺はま子、テレサ・テン、中国語・日本語それぞれで歌われ、受け止め方もそれぞれ。中国では、日本軍の謀略工作か、それとも抗日歌か? 蒋介石を待ち望む歌? 共産党政権下ではエロで頽廃的だから禁止すべきとされた。時代の政治的思惑も渦巻く中で正反対の解釈がまかり通り、タブー視されたり、日中友好歌とされたり。ペンネームを使った作詞・作曲家の正体も分からず、最終的に劉雪庵の名前が突き止められるが、彼は反革命的と迫害を受けた末、著者の連絡と行き違うようにこの世を去っていた。

 中国で「漢奸」と決め付けられてしまった人々の立場的もしくは内面的葛藤には以前から関心がある。台湾出身で漢奸と名指しされて暗殺された新感覚派の文人・劉吶鴎の名前も本書に出てきたが、彼については田村志津枝『李香蘭の恋人──キネマと戦争』(筑摩書房、2007年)で知ってから興味を持っている。

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