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2010年3月21日 (日)

川島真・毛里和子『叢書☆中国的問題群12グローバル中国への道程 外交150年』、川島真編『異文化理解講座6 中国の外交──自己認識と課題』、川島真・服部龍二編『東アジア国際政治史』

川島真・毛里和子『叢書☆中国的問題群12グローバル中国への道程 外交150年』(岩波書店、2009年)
・中国政治外交史を主導する二人による中国外交史の通史。前半の清末~1949年までを川島、後半の中華人民共和国成立から現在までを毛里が分担執筆。共著ものというのはたいていどこかチグハグなものだが、本書は一貫した流れが出来ている。ポイントが簡潔にしぼられ、文献案内も充実しているので中国外交史入門としては最適だと思う。
・中国近代は国内政治が動揺しやすかった→外交を行ない、国際社会の承認を受けることが政権としての正当性。複数の政権の並存状態がしばしばあった点で「二つの中国」的素地は近代中国に育まれていた。
・領土を奪われたり、主権侵害の経験→被害者として自らを位置付け→国際的地位向上への熱意(150年経った現在、実現しつつあるとも言える)。冊封していた国々が列強により植民地化もしくは冊封からの離脱→これを中国の国権喪失過程として描く外交史は、国民の共同幻想としての「国史」。
・こうした歴史的経緯から中国外交にはナショナリズムとの親和性が強いが、他方で国力不十分であるため国際協調が主旋律となった。弱国としての現実、強国という理念的志向性との並存。
・国内の論理が外交に反映されやすい性質。
・毛沢東時期は、国際環境についてのリーダー(毛沢東)の認識が与件として内政に連動(反右派闘争、大躍進政策、文化大革命)→しかし、文化大革命後の権力闘争や経済破綻で政権の正当性磨滅→鄧小平時期は国内的要員〔安定、開放、発展〕が対外関係へと連動。
・毛沢東時期は向ソ一辺倒→中間地帯論→一条線戦略→三つの世界論。ソ連・アメリカに振り回された経緯を踏まえて、鄧小平時期になると独立自主(全方位外交)。
・国家主権・内政不干渉→平和共存五原則が現在でも最重要準則となっている。
・対日二分論(軍国主義者と一般日本人とに二分)→対日関係において道義性やリーダーの人格的関係に依存するもろさがあった。
・鄧小平時期になると、毛沢東時期の外交を規定していたナショナリズム・革命イデオロギーとは異なり、国家利益に基づくリアリズムの主張も広まった。
・経済発展→「責任ある大国」としての自覚。

川島真編『異文化理解講座6 中国の外交──自己認識と課題』(山川出版社、2007年)は中国外交関連の専門家11人が寄稿。中国にとっての「外交」認識、パブリック・ディプロマシー(外交としての広報活動)、対外文化交流のあり方、経済外交、軍事外交、中米関係、上海協力機構、対朝鮮半島政策、ASEANとの関係、国境線をめぐる外交、日中関係、それぞれのテーマを通して現代中国の外交を多面的に映し出す。

川島真・服部龍二編『東アジア国際政治史』(名古屋大学出版会、2007年)は日本・朝鮮半島・中国を中心に、第Ⅰ部で冊封体制にあった19世紀末から第一次世界大戦まで「伝統」と「近代」が重なり合いながら進められた東アジア国際秩序の再編成、第Ⅱ部でワシントン体制から第二次世界大戦後の脱植民地化まで、第Ⅲ部で戦後から現代につながる東アジア国際秩序の形成経過を通史的にまとめられている。執筆者はコラムも含めると第一線の研究者が網羅的に勢揃い、錚々たる顔触れだ。時間的にも空間的にも大きな枠組みの中で個別論点も詳細に論じられており、レファレンス本として手もとに置いておきたい。

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