ジャック・プレヴォタ『アクシオン・フランセーズ:フランスの右翼同盟の足跡』
ジャック・プレヴォタ(斎藤かぐみ訳)『アクシオン・フランセーズ:フランスの右翼同盟の足跡』(白水社・文庫クセジュ、2009年)
普仏戦争に敗れた結果として生まれたフランス第三共和政、政教分離政策、ドレフュス事件、こうして伝統主義勢力が劣勢に立たされる中、アクティブな活動を展開した雑誌『アクシオン・フランセーズ』(1908年創刊)。政治的には傍流だったが、知的活動は活発だった。シャルル・モーラスを中心に、この活動の後世への影響も含めて簡潔にまとめられている。
モーラスは教権擁護だったが、彼の政治第一主義はかえってローマ法皇ピウス11世との齟齬を来たしたというのが興味深い。ナチス占領下ではフランス国家のひたすらな回復を求める考え方からヴィシー政権のペタン元帥を支持。戦後は裁判にかけられ、有罪判決を受けたとき、「ドレフュスの復讐だ!」と叫んだという。モーラスの本領は文芸批評にあったこと、民主政体における国家の権威という難問を突きつけたこと、フランス社会に沈潜していた不安に応えていたことなどが指摘される。
フランス右翼関係では、以前に剣持久木『記憶の中のファシズム──「火の十字団」とフランス現代史』(講談社選書メチエ、2008年)を取り上げたことがある(→こちら)。福田和也『奇妙な廃墟』(ちくま学芸文庫、2002年)は、読もう読もうと思いつつ、まだ手に取っていなかった。
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