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2010年2月27日 (土)

浜渦哲雄『イギリス東インド会社──軍隊・官僚・総督』

浜渦哲雄『イギリス東インド会社──軍隊・官僚・総督』中央公論新社、2009年

 イギリス東インド会社の組織システムに注目してその変遷をたどった概説書。むかし世界史の授業では、東インド会社の失政→セポイの反乱→イギリス政府が直接統治に乗り出した、と習った覚えがあるが、実際には反乱が起こった時点ではすでにイギリス本国政府との共同統治方式になっており、会社は失政の責任を負わされる形で解散させられたらしい。

 東インド会社はもともとエリザベス女王時代の特許状によりアジア交易を独占的に行う商人たちの組合として出発、航路独占を自力で確保するため軍隊を持ち、プラッシーの戦い以降は領域支配まで担った特異な株式会社であった。株主対策として社員の給与水準が低く抑えられていたため不正蓄財が横行、本国議会で問題視されて規制のため本国政府が介入、会社の権限は徐々に縮小されていく。商業組織と政治組織、二つの性格が重なり合っていた点にこの会社の分かりにくさがあるが、その比重の移り変わっていく過程を本書は整理してくれる。見方を変えれば、商業目的として始まった制度が長い時間的経過の中で政治組織として換骨奪胎され、現在のインド政府に至っているとも言える。東インド会社のモダナイザーとしての役割が現在のインドの経済的発展にもつながっていると指摘されるが、その根拠について明示的な議論がないのが気になった。

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