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2010年2月18日 (木)

ケネス・ポラック『ザ・パージァン・パズル──アメリカを挑発し続けるイランの謎』、マーク・ボウデン『ホメイニ師の賓客──イラン米大使館占拠事件と果てなき相克』

 イラン情勢についての本としては、Ray Takeyh, Hidden Iran: Paradox and Power in the Islamic Republic(Holt Paperbacks, 2007→こちら)、Stephen Kinzer, All the Shah’s Men: An American Coup and the Roots of Middle East Terror(John Wiley & Sons, 2008→こちら)、Ray Takeyh, Guardians of the Revolution: Iran and the World in the Age of the Ayatollahs(Oxford University Press, 2009→こちら)、John W. Limbert, Negotiating with Iran: Wrestling the Ghosts of History(United States Institute of Peace Press, 2009→こちら)を今までに取り上げた。いずれも現代史におけるイランと欧米(特にアメリカ)との関係を捉え返す中で、双方の敵意のため相手認識をマイナスの方向へ増幅させた結果として政権担当者の身動きが取れなくなってしまっているという問題意識が共有されている。

 ケネス・ポラック(佐藤陸雄訳)『ザ・パージァン・パズル──アメリカを挑発し続けるイランの謎』(上下、小学館、2006年)の問題意識もやはり同様である。アメリカの政策的失敗にもきちんと目配りされているが、イラン・コントラ事件への言及が少ないのは著者自身がCIAの出身(年齢的に事件後の入局とはいえ)だから何か慮りでもあるのか、守秘義務でもあるのか。モサデクについては、反米感情→彼の存在感が実際以上に神話化されたとも指摘される。

 マーク・ボウデン(伏見威蕃訳)『ホメイニ師の賓客──イラン米大使館占拠事件と果てなき相克』(上下、早川書房、2007年)は1979年におこったテヘランのアメリカ大使館人質事件の経過を描き出したノンフィクション。読み物として面白いだけでなく、大使館内部に拘束された人質たちの情況(上掲書のうちの一冊の著者ジョン・W・リンバートも当事者として登場)、カーター政権の迷走、イラン側の複雑な背景事情についてもポイントはきちんとおさえられている。占拠した過激派学生たちの「アメリカ=CIA=悪魔」という思い込みは一種戯画的ですらあるが、そうしたお互いの認識ギャップが深まったことには複雑な歴史的背景があったことを考えねばならないだろう。なお、ソマリアでの米軍の失敗を描いた『ブラックホークダウン』もこの著者による。

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