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2010年1月15日 (金)

陳柔縉《台灣西方文明初體驗》

陳柔縉《台灣西方文明初體驗》麦田出版、2005年

 本書の性格を一言で表わすなら“台湾はじめて物語”といったところだろうか。西洋由来の文物やライフスタイルが当たり前となっている現代、「これは一体いつから台湾にあるんだろう?」という素朴な疑問を発端に一つ一つその来歴を調べ上げていく。台湾の読書界では好評をもって迎えられたようで、続編も次々と刊行されている。《台灣摩登老廣告》(皇冠文化出版、2008年→こちら)、《人人身上都是一個時代》(時報文化出版、2009年→こちら)は先日取り上げた。

 語られている項目を並べると、カフェ、チョコレート、牛肉、水道、歯ブラシ・歯磨き粉、セメント、電話、電灯、時計、名刺、トイレ、ホテル、デパート、クリスマス、天気予報、新聞、宝くじ、西暦、銅像、公園、裁判所、監獄、選挙、自動車、大通り、飛行機、汽船、スポーツ事始め、テニス、水泳、ゴルフ、サッカー、ピアノ、西洋画、英語、図書館、幼稚園、卒業式、ヒゲ、洋服、男女関係、自由恋愛、職業婦人。当時の人々の暮らしぶりがうかがわれるエピソードも描かれていて面白い。

 台湾に西洋の文物が流入した時期の大半は日本統治期と重なる。すでに欧化政策を進めて列強の仲間入りを果たしていた日本が植民地台湾にも同様のことを強制したからだ。戦後、国民党政権による中国化政策の中で日本統治期の歴史はタブーとなり、そのあおりで抗日史観とは関わりのない世相史的なものまで忘れ去られてしまった。こうした空白を埋めようという問題意識も本書の背景にあると述べられている。

 ただし、日本人である私が本書を読む場合には、日本統治期の近代化=西洋化にばかり目を向けてしまうのも変な話だ。日本統治以外にも、清朝末期における劉銘伝の時代からすでに鉄道や電灯が設置され始めていたし、マッケイをはじめとした宣教師を通しても西洋の文物には触れられていた(例えば、サッカーはミッション・スクールを通して直接教えられたそうだ)。そうした歴史の重層性に台湾という国の興味深さを感じる。

 そもそも、19世紀半ばから20世紀前半にかけて、東アジア全体が近代化=西洋化を否応なく迫られており、劉銘伝や沈葆楨など清朝の洋務官僚が台湾に派遣されていたのはそうした時代的背景による。日本が台湾を近代化=西洋化したという構図ではなく、日本も台湾も同時進行で近代化=西洋化に邁進していったという視点で捉える方が建設的なのではないかという気がしている。

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