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2010年1月24日 (日)

ジグムント・バウマン『幸福論──“生きづらい”時代の社会学』

ジグムント・バウマン(高橋良輔・開内文乃訳)『幸福論──“生きづらい”時代の社会学』(作品社、2009年)

 原著タイトルはThe Art of Lifeである。邦訳タイトルも本の装丁も“やさしい”感じだが、バウマンの議論で示される現状分析は決して“やさしい”ものではない。内容的な方向性としては、『リキッド・モダニティ』(大月書店、2001年)をはじめ先行する一連の著作の延長線上にある。例えば、経済構造の変化によって常に個人のアイデンティティに変化が強要されている流動性、“ファッション”が社会的承認(→自己アイデンティティ形成)の基準となっている消費社会、等々の論点は最近の社会学的議論に慣れた人にとって特に目新しくはないかもしれない(こうした社会状況の中での“成功”感情が通俗的な意味での“幸福”だと言える)。

 後半では哲学者たちの思索が取り上げられ、最後はレヴィナスでしめくくられる。不確実性の中でこそ、内的な自発性に基づいて選択を行なうのが“道徳”であり、自分自身が確信している道徳感情によって後悔しない振る舞いを取るところに“幸福”なるものが見出される。例えば、ナチスに迫害されたユダヤ人を危険も顧みずに匿ったポーランド人の出身背景は様々で、彼らがなぜそのような行動を取ったのか、そこに社会的因果関係は何も見出せないのは魅力的な謎だという指摘が目を引いた(188~194ページ。なお、バウマン自身、ユダヤ系ポーランド人である)。

 バウマン言うところの“リキッド・モダニティ=液状化した近代”によって個人が目まぐるしく“変化”を迫られている中でも、個人の側にそうした強制に納得できない、従順にはなれない何かがある、それを様々な論点を提示しながら間接的に指し示し、読者自身に自分なりのあり方を考えさせようというところに本書の意図があると言えるだろうか。

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