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2010年1月24日 (日)

裵淵弘『朝鮮人特攻隊』

裵淵弘『朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち』 (新潮新書、2009年)

 日本の植民地支配下にあった戦時下では“日本人”として死ぬことを強要され、戦後になると今度は“親日派”狩りの中で国賊とみなされてタブー視されてしまった朝鮮人の特攻隊員たち。民族差別を見返してやろうと軍人を志して、親友に「天皇のために死ぬわけにはいかない」ともらす人もいた。歴史のエアポケットの中にはまり込んでしまった彼らの死を、本書は手掛かりが乏しく遺族の戸惑った視線も受ける中で掘り起こしていく。

 朝鮮半島にしても、あるいは台湾にしても、“日本軍”として従軍した人々に関する研究には、戦後におけるイデオロギー的なものが否応なく政治的論争を引き起こしてしまう。外的な制約というばかりでなく、後世の後知恵で脈絡付けようとしたくなる我々自身の視点に絡みつく価値観というレベルも含めて。彼らが内面的に抱えていたものまで迫るのは本当に難しいが、それが面倒だからと言って目を背けてしまうわけにはいかない。

 韓国航空史という点でも興味深く読んだ。女性飛行士の先駆け・朴敬元は被支配民族、ましてや女性でも自分の夢をつかもうと懸命だったし、それに先行する韓国初の飛行士・安昌男という人物は独立運動のため閻錫山のもとに逃れていった(と言われている)という謎めいたところが興味深い。安昌男が飛行士になろうと志したきっかけはアメリカ人飛行士アート・スミスの曲芸飛行だったという。ちょうど同じ頃、台湾初の飛行士となる謝文達もやはりアート・スミスの曲芸飛行を見て触発されたということを陳柔縉『人人身上都是一個時代』(時報文化出版、2009年)で最近読んで知ったばかりだった。

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