« 陳柔縉《台灣西方文明初體驗》 | トップページ | 周婉窈『「海ゆかば」の時代──日本植民統治末期台湾史論集』 »

2010年1月16日 (土)

Jessica Stern, “Mind Over Martyr: How to Deradicalize Islamist Extremists”

Jessica Stern, “Mind Over Martyr: How to Deradicalize Islamist Extremists,” Foreign Affairs, 89-1, Jan/Feb 2010

・タイトルは「殉教者の処遇に注意を払うべし:イスラム過激派を脱急進化させる方法」
・過激派をいくら殺害・捕縛したところでテロが終わるわけではない。強硬手段はかえって反西洋の気運をイスラム社会に広めてしまう。
・拘束したテロリストへの脱急進化プログラムは有効である。つまり、テロ活動へとリクルートされてしまう動機を解消して、通常の社会生活へと再び組み込んでいくことが必要。
・著者は、オランダの映画作家テオ・ヴァン・ゴッホがアフリカ系イスラム過激派によって殺害された事件をきっかけにロッテルダム市から招かれ、脱急進化プログラムに関わり始めたという。オランダは多元的寛容を特徴とする社会であったが、事件後、きしみが生じている。この事件については以前、Ian Buruma, Murder in Amsterdam: Liberal Europe, Islam, and the Limits of Tolerance(Penguin Books, 2007)を読んだ(→こちら)。
・急進主義者のリハビリテーションのためには、彼らには社会的不公正への反発があること、人それぞれ動機は様々であること、イデオロギー的なものはむしろ稀であることへの理解が前提とされる。吹き込まれたイデオロギーには、イスラムの教義からむしろ逸脱していることも多い。
・若者は、最初はその気がなくても、音楽やファッションなどを通じて群れをなし、グループ行動自体が過激化するきっかけとなりやすい(反米ヒップホップなども利用されたという)→家族やコミュニティーからのサポートが必要。
・貧困・失業→職業訓練が有効。
・心理的な問題、例えば、民兵集団の中で幼少期にレイプされたトラウマ→カウンセリングなどのケアが必要。
・脱急進化プログラムにおいては、彼ら自身が抱えている社会的不公正に対する不満や怒りを平和的な手段で表現させることも社会再統合への不可欠なプロセスとなる。

|

« 陳柔縉《台灣西方文明初體驗》 | トップページ | 周婉窈『「海ゆかば」の時代──日本植民統治末期台湾史論集』 »

国際関係論・海外事情」カテゴリの記事

中東・イスラム世界」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Jessica Stern, “Mind Over Martyr: How to Deradicalize Islamist Extremists”:

« 陳柔縉《台灣西方文明初體驗》 | トップページ | 周婉窈『「海ゆかば」の時代──日本植民統治末期台湾史論集』 »