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2010年1月14日 (木)

Bruce Gilley, “Not So Dire Straits: How the Finlandization of Taiwan Benefits U.S. Security”

Bruce Gilley, “Not So Dire Straits: How the Finlandization of Taiwan Benefits U.S. Security,”Foreign Affairs, 89-1, Jan/Feb 2010

・タイトルは「両岸関係をあまり荒立てるな」。
・国際政治学で「フィンランド化」という表現を使うことがある。冷戦下、超大国ソ連の脅威にさらされていた小国フィンランドが、ソ連側に様々な譲歩をすることで、米ソどちらにも属さない中立国として独立を守ってきたことに由来する。
・この論文は「フィンランド化」に肯定的な意味合いを持たせ、台湾の対中国戦略に活用できると主張する。
・中国にとっての関心事は統一=台湾の占領にあるのではなく、台湾の地政学的位置にアメリカの勢力が居座って中国に対する脅威となることを恐れていると指摘→台湾が中立を守れば中国の国益にかなう。
・台湾が「フィンランド化」によって中立政策を取れば、東アジアにおける米中の緊張関係の仲介役となれるし、中国の軍拡にも抑制への動機付けをすることができる。また、台湾・中国の往来が頻繁になれば中国の民主化へと影響を及ぼすこともできる、とされる。台湾の領土は事実上保全されているし、民主主義もしっかり根付いている。そうした台湾だからこそ、中国の懐へと飛び込んでいけば、アメリカの国益にもかなう、という趣旨。
・外交政策上の着眼点としては面白い発想だと思う。ただ、中国の民主化への影響という論点は取って付けたような印象も受ける。例えば、香港が中国に返還されて、そうした成果があったという話は聞いたことがない。香港に関する話題が比較事例として議論の中へ組み込まれていない点には若干説得力が欠けているように思った。

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