Bruce Gilley, “Not So Dire Straits: How the Finlandization of Taiwan Benefits U.S. Security”
Bruce Gilley, “Not So Dire Straits: How the Finlandization of Taiwan Benefits U.S. Security,”Foreign Affairs, 89-1, Jan/Feb 2010
・タイトルは「両岸関係をあまり荒立てるな」。
・国際政治学で「フィンランド化」という表現を使うことがある。冷戦下、超大国ソ連の脅威にさらされていた小国フィンランドが、ソ連側に様々な譲歩をすることで、米ソどちらにも属さない中立国として独立を守ってきたことに由来する。
・この論文は「フィンランド化」に肯定的な意味合いを持たせ、台湾の対中国戦略に活用できると主張する。
・中国にとっての関心事は統一=台湾の占領にあるのではなく、台湾の地政学的位置にアメリカの勢力が居座って中国に対する脅威となることを恐れていると指摘→台湾が中立を守れば中国の国益にかなう。
・台湾が「フィンランド化」によって中立政策を取れば、東アジアにおける米中の緊張関係の仲介役となれるし、中国の軍拡にも抑制への動機付けをすることができる。また、台湾・中国の往来が頻繁になれば中国の民主化へと影響を及ぼすこともできる、とされる。台湾の領土は事実上保全されているし、民主主義もしっかり根付いている。そうした台湾だからこそ、中国の懐へと飛び込んでいけば、アメリカの国益にもかなう、という趣旨。
・外交政策上の着眼点としては面白い発想だと思う。ただ、中国の民主化への影響という論点は取って付けたような印象も受ける。例えば、香港が中国に返還されて、そうした成果があったという話は聞いたことがない。香港に関する話題が比較事例として議論の中へ組み込まれていない点には若干説得力が欠けているように思った。
| 固定リンク
「国際関係論・海外事情」カテゴリの記事
- ニーアル・ファーガソン『帝国』(2023.05.19)
- ジェームズ・ファーガソン『反政治機械──レソトにおける「開発」・脱政治化・官僚支配』(2021.09.15)
- 【メモ】荒野泰典『近世日本と東アジア』(2020.04.26)
- D・コーエン/戸谷由麻『東京裁判「神話」の解体──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克』(2019.02.06)
- 下斗米伸夫『プーチンはアジアをめざす──激変する国際政治』(2014.12.14)
「台湾」カテゴリの記事
- 稲葉佳子・青池憲司『台湾人の歌舞伎町──新宿、もうひとつの戦後史』(2018.02.13)
- 【映画】「灣生畫家 立石鐵臣」(2016.05.09)
- 【映画】「我們的那時此刻」(2016.03.23)
- ドキュメンタリー「The MOULIN 日曜日式散歩者」(2015.08.22)
- 港千尋『革命のつくり方 台湾ひまわり運動──対抗運動の創造性』(2014.12.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント