「倫敦から来た男」
「倫敦から来た男」
霧が立ち込める冬の夜、波止場にイギリスから来た船が接岸する。ロンドンで大金を盗んだ男たち二人が仲間割れして一人が殺され、その現場を目撃したマロワンは、男たちの残した鞄を拾い上げた。中に入っていた大金を見たマロワンの心中にきざした変化は、やがて運命を変えていく。
モノクロームの映像は影と光の対照を印象的な強さで際立たせる。マロワンの寒々とした心象風景を映し出しているようでいて、同時にその冷たさにはどこか抒情的な美しさすら漂う。廃墟とまでは言わないが、うらぶれた感じの街並が良い。セリフに呼応する俳優の表情や仕草、長回しのカメラワークで別々の複数の動きがスムーズに展開、注意深く見ていると一つ一つの映像構成が緻密に計算されているのが分かる。
原作はジョルジュ・シムノンということでサスペンス映画かと思っていたのだが、そういう趣旨ではないようだ。ストーリーをたどっていくだけだと、正直なところ、眠気を催すかもしれない。むしろ、映像そのものに表われている情感をゆっくりかみしめるタイプの映画だろう。
【データ】
監督:タル・ベーラ
原作:ジョルジュ・シムノン
2007年/ハンガリー・ドイツ・フランス/138分
(2009年12月13日、渋谷、シアター・イメージフォーラムにて)
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