「ウェイヴ」
「ウェイヴ」
1960年代、アメリカのある高校で“独裁”をテーマとした実験授業が行なわれ、生徒たちが暴走してしまった事件があったという。これを現代ドイツに置き換え、人間の集団行動がはらむ、ある意味で意図せざる展開を描こうとした映画である。
独裁→ナチス→ドイツという連想は陳腐というのを通り越して偏見ですらあるが、生徒たちも「またそれかよ」という感じに食傷気味である。教師は「現代ドイツで独裁なんてあり得ないと言うが、本当にそうなのか?」と問いを発する。
教育目的のロールプレイングである。しかし、指導者の選出(教師自身が指名された)、規律、制服、敬礼(波型のサイン)、ロゴマークと集団表象をみんなで実践していくうちに、仲間としての団結意識が芽生える一方で、異端者の排除、集団外への自己顕示的暴力性といった形でエスカレート、その中に巻き込まれた教師自身も崇拝されることに満更でもない気分になってくる。指導者への熱狂的献身の態度を示した青年には彼自身の疎外感が起因していることがほのめかされ、さらには社会的な不満がこうした集団現象に結び付く可能性が示される。政治現象の一つの縮図を描き出しているようで興味深い。
【データ】
原題:The Wave/Die Welle
監督・脚本:デニス・ガンゼル
2008年/ドイツ/108分
(2009年12月4日レイトショー、シネマート新宿にて)
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コメント
こんばんは。
いつも面白そうな映画を見てらっしゃいますね!
この映画興味があります。
だいぶ前に、刑務所での実験を元にしたというesという映画を見たのですが、ロールプレイングつながりでそれを思い出しました。
虚構を演じている時でさえ、人間の持ってる性質が出てきてしまう・・というのが面白いですね。
投稿: にゃんちゅ | 2009年12月 5日 (土) 22時39分
にゃんちゅ様、コメントをありがとうございました。
そういえば、esは心理学的実験の映画化ということで話題になりましたね。残念ながら、私はまだ観ていないのですが。
投稿: トゥルバドゥール | 2009年12月 6日 (日) 01時55分