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2009年12月10日 (木)

P・F・ドラッカー『ネクスト・ソサエティ』、ロバート・B・ライシュ『勝者の代償』

 P・F・ドラッカー(上田惇夫訳)『ネクスト・ソサエティ』(ダイヤモンド社、2002年)は現在進行形の経済社会の見通しを語る論文やインタビューをまとめている。製造業→知識社会という移り変わりの中、自分の専門分野を持った知識労働者が主役。①ボーダーレス、②万人に教育が行渡る→誰でも階層上昇の可能性あり、③競争が激化するため成功と失敗が並存(競争によるストレス)を指摘。①と③はともかく、②についてはうまくいっておらず、出発点の不平等→階層格差拡大という問題は周知の通り。経済社会における個人の役割に注目するのがドラッカーの視点で、都市におけるコミュニティー不在という問題意識→かつて『産業人の未来』で職場コミュニティーに期待を寄せたが、実際にはうまくいかなかったと語る。

 ロバート・B・ライシュ(清家篤訳)『勝者の代償』(東洋経済新報社、2002年)は、ドラッカー言うところのネクスト・ソサエティがもたらすマイナス面に焦点を合わせる。かつてのオールド・エコノミーは安定的で予測可能な経済関係のもとで大規模生産を可能にしていた。対してニュー・エコノミーにおいては、選択肢が大幅に広がり、取引が簡単なのですみやかな切り替えが可能→売り手は顧客を失うまいと焦って競争が激化→果てしない技術革新のダイナミズムを生み出している。しかし、見通しが不確実であること自体が標準化。企業組織においても雇用関係が変化、企業間競争がスピードアップする中で被雇用者への制度的な保証がゆるむ。個人レベルで落伍したくないという競争圧力が強まり、絶え間ない努力が求められ、不平等が拡大、ストレスフルな雇用形態。取引関係の中で自分を売り込んでいく「市場志向型人間」が経済社会の中心となる。ちなみに、著者のライシュ自身が仕事が忙しすぎて家族と過ごす時間を取れないのがつらいと言って仕事(クリントン政権の労働長官)を辞めている。

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