木畑洋一『イギリス帝国と帝国主義──比較と関係の視座』
木畑洋一『イギリス帝国と帝国主義──比較と関係の視座』(有志舎、2008年)
・イギリス帝国を視点の基軸に置きつつ、「帝国主義」をめぐる諸論点を考察。
・19世紀後半以降、「帝国」による世界分割。日本の登場は、この帝国主義世界体制をむしろ完成させた。
・帝国意識:民族・人種差別意識と大国主義的ナショナリズムの結び付き→「文明の使命」感。階級意識にかかわらず日常生活に見られた潜在的帝国意識を検討する必要。ナショナル・アイデンティティの強化という機能(1960年代以降、スコットランドやウェールズなどの「ナショナリズム」→国民国家が自明視できず→「イギリス人」統合の表象として「帝国意識」)。
・支配者側に多民族支配を当然視する意識がある一方で、被支配者側にも支配・従属を不思議に思わない依存意識・植民地意識が培養された(とりわけ文化面で)→政治的には独立してもこの点での脱植民地化が未完の課題として残った。また、経済構造の問題。
・他方で、旧支配者側に残った「大国意識」からの脱却も課題。イギリスの場合、ヨーロッパ統合に消極的となった原因。
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