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2009年11月23日 (月)

「副王家の一族」

「副王家の一族」

 十九世紀半ばのシチリア王国。イタリア統一運動の盛り上がりは人々を沸き立たせており、シチリアにもガリバルディ率いる赤シャツ隊が上陸した。日本でたとえれば、幕末・維新に相当する激動期であったと言えるだろう。時期的に同じというだけでなく、分裂状態にある国家の統一と政治的近代化が連動していたという意味でも。

 シチリアにおけるスペイン・ブルボン朝の副王であった名門貴族ウゼダ家の面々。時代情勢の変転の中でも封建的思考から抜けられない父とその束縛から逃れようとする息子の葛藤。こうしたストーリー上のコンセプトの点でも、時代背景という点でも、ルキノ・ヴィスコンティ「山猫」を髣髴とさせる。実際、「副王家の一族」の原作小説は「山猫」にも影響を与えたらしい。

 「山猫」でバート・ランカスター演じる父の、自分たち貴族が滅び行く宿命をはっきりと自覚しつつも毅然と胸を張って向き合う、そうした黄昏の美学が私には印象的だった。「副王家の一族」ではむしろ肉親同士の憎しみや遺産相続をめぐる思惑といった醜態がさらけ出され、死を前にして迷信にとりつかれて悪あがきをする父の姿は対照的である。

 “進歩”の信奉者となっていた息子だが、ウゼダ家を継承することになって考える。“貴族”を“貴族”たらしめるのは何か。父は“憎悪”こそが人を育てると考えていた。対して、息子の答えは“権力”。彼は王党派ではなく、左翼の支持を得て選挙に打って出る。

【データ】
原題:I vecerè
監督・脚本:ロベルト・ファエンツァ
原作:フェデリコ・ロベルト『副王たち』(1894年)
2007年/イタリア/122分
(2009年11月23日、渋谷Bunkamuraル・シネマにて)

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