« 辺境のガンディー、イスラムの非暴力主義 | トップページ | 蒋介石関連で5冊 »

2009年11月16日 (月)

「母なる証明」

「母なる証明」

 若干の知的障害を持つ青年トジュン(ウォンビン)は母親(キム・ヘジャ)と二人暮らし。母は貧しい生活をやりくりしながらせっせと息子の世話を焼いている。ある晩、町で女子高生が殺され、事件発生時に近くを歩いていたトジュンが逮捕された。母は息子の冤罪を晴らそうと自分で事件を調べ始める。

 ──と書くと、肝っ玉母さんの熱血探偵物語みたいな感じかもしれないが、実はそんなに単純なストーリーではない。金をゆすりに来たトジュンの悪友は、事件の真相調査に協力しながらも「俺を含めて誰も信用してはいけない」と言う。拘置所に入れられたトジュンは失われた記憶を少しずつ取り戻していた。母が二度と思い出したくなかった、幼少時のある出来事も…。疑心暗鬼とストーリーのどんでん返しに緊張感があって、サスペンス・ドラマとして見ごたえがあった。

 真相を突き止めたとき、母はどうするか。邦題「母なる証明」の意味合いがそこにある。そして、彼女は“真犯人”の青年が孤児であったことを知る。殺された女子高生の家庭環境も悲惨で、二人は心を通い合わせていたであろうこともほのめかされる。“真犯人”の青年に母はいない。そして、母である彼女自身はトジュンを思うあまり何をしたのか。寒々とした野山の中、母が一人歩いていく姿を遠くから捉えたシーン、哀しげな表情で狂ったように一人踊り狂うシーンが時折挿入され、これらの映像から漂ってくる彼女自身のやるせない孤独感が印象的だった。

【データ】
監督・原案:ポン・ジュノ
2009年/韓国/129分
(2009年11月14日、新宿バルト9にて)

|

« 辺境のガンディー、イスラムの非暴力主義 | トップページ | 蒋介石関連で5冊 »

映画」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「母なる証明」:

« 辺境のガンディー、イスラムの非暴力主義 | トップページ | 蒋介石関連で5冊 »