喜安朗『パリ──都市統治の近代』
喜安朗『パリ──都市統治の近代』(岩波新書、2009年)
サブタイトルから分かるように、ゆっくりカフェオレでも飲みながら、というタイプの本ではない。現在のパリの街並はナポレオン三世の時代のセーヌ県知事・オスマンによって原型が作られたわけだが、本書が描くのはそこに至るまでのいわば前史である。絶対王政からフランス革命を経て第二帝政まで、社会思想の担い手としての民衆生活史に主たる関心が置かれている。
当初は、王権or政治権力と結び付いた中間団体としての社団(同業組合等)が一定のコントロール→人口の増加・流動化→不安定化→社団の解体→民衆レベルでアソシアシオンの生成→民衆蜂起の主体となる。19世紀半ば、パリの民衆蜂起鎮圧とアルジェリア征服とが同時進行していた(パリの貧民をアルジェリアに送って植民させる計画のあったことも指摘される)→フランス植民地帝国の首都となり、それはナポレオン三世の登場、オスマンによるパリ改造と軌を一にしていたと結ばれる。“ポリス”に焦点が合わされるが、昔は警視が街にとけこんで仲裁役のような役割を果たしていたというのはちょっと興味深い。
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